P-II-C-2
Fallot四徴における低酸素発作に対する輸血療法の検討
国立循環器病センター小児科
坂口平馬,渡辺 健,細田和孝,高杉尚志,山田 修,越後茂之

【はじめに】臨床的にFallot四徴では輸血によって低酸素発作の改善が得られることを経験する.輸血により組織での酸素供給が改善する可能性が考えられる.今回われわれはFallot四徴の症例で低酸素発作予防に輸血を行った 7 例について検討を行った.【方法および対象】2002年 4 月より2004年 1 月までの22カ月間に当センター乳幼児病棟に入院した動脈管および体肺側副血行路に依存しないFallot四徴16症例のうち低酸素発作の予防に輸血を行った 7 例について検討した.また輸血中の酸素化を評価するために近赤外光酸素モニタを用いた.【結果】17症例中,輸血を行ったのは 7 例であった.輸血前のHb値は平均11.4g/dl(9.1~12.8),輸血後は平均17.1g/dl(15.0~19.9)であった.7 例中 5 例で臨床的に発作の改善が得られた.2 例は発作の改善により,体重増加を待ち,BT-shuntを施行,3 例は発作が改善し,そのまま心内修復術を施行された.臨床的に著効しなかった 2 例は早期の心内修復術を施行された.輸血後のHb値の高かった 2 例では輸血後全く低酸素発作を起こさなくなった.近赤外光酸素モニタを用いた 3 例では全例で酸化型Hb,還元型Hbともに上昇が観察された.【考案】Fallot四徴の相対的貧血に対する輸血療法の機序には,Hb濃度上昇に伴う酸素含量の増加,volume expanderとしての効果が考えられる.さらに輸血後のHb濃度が高かった 2 例においては,血液粘稠度の増加により体血管抵抗が増加して肺血流量の増加につながった可能性が示唆された.近赤外光酸素モニタにおける酸化型Hb,還元型Hbの両方の上昇からも血液粘稠度増加に伴う末梢血管レベルでの血管抵抗増加が低酸素発作予防に関与している可能性が考えられた.

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