P-II-C-3
特発性心筋破裂を発症した13歳男児例
福井愛育病院小児科1),福井循環器病院小児科2),福井循環器病院心臓血管外科3)
西田公一1),寺町紳二2),松田義和1),石原義紀1),河合隆寛3),大中正光3)

基礎疾患なく心タンポナーデを発症し特発性心筋破裂と考えられた 1 例を経験した.【症例】13歳男児.心疾患を指摘されたことはなく,他全身の基礎疾患もなし.入院 1 週間前頃から胸痛があり近医小児科を受診.心エコーにて心嚢液貯留を認めたことより心外膜炎を疑われ当科紹介入院.【経過】経過中発熱はなく,胸痛は間歇的で日常生活には支障なかった.聴診上心音減弱があったがfriction rubは聴取せず.心エコーでは心嚢液は心基部で収縮期10.5mm,拡張期5.7mm貯留していた.心室運動低下はなかった.白血球数は入院時13,600/μlと上昇を認めたが血清CRPは陰性.CKを含む他生化学データにも異常はなかった.心電図上全般性のST-T上昇とPR低下の所見が認められた.アスピリン,ラシックスの内服のみで経過観察した.入院 3 日目朝まで症状は変わらず,時々軽い胸痛を訴えるのみであった.エコー所見も明らかな変化はなし.入院 3 日目の午後より突然強い胸痛と呼吸困難,血圧低下があり,同日再度行ったエコーにて心嚢液の著増と心嚢腔内のフィブリン塊と思われるモヤモヤエコーの出現があり出血が疑われた.右室自由壁心尖部付近に穿孔と思われる微小な欠損部分がありパワードプラにて同部位での心腔心嚢間の交通血流を認めた.心筋穿孔による出血性タンポナーデと診断し緊急開胸ドレナージを行った.術中,エコーにて推定した部位に穿孔を認め,これを縫合止血し終了した.肉眼上心筋には明らかな虚血や壊死は認められなかった.術後経過は良好であり,術後約 1 カ月半で退院となった.【まとめ】病因として何らかの炎症基盤があったものと推測されたが術中に十分な組織採取ができず原因究明はできていない.外傷の既往はなく入院時に心筋破裂を疑うことは困難であった.また本例では穿孔部位同定にパワードプラが有用であった.

閉じる