P-II-C-4
心筋障害を伴った先天性拘縮性くも状指趾症(Beals 症候群)の 1 例
日本医科大学小児科
松本多絵,牛腸義宏,右田 真,早川 潤,小川俊一

在胎38週 5 日,体重2,786gで頭囲正常分娩にて出生した男児.細長い四肢,内反足,多発性関節拘縮,耳介変形を認めた.また,父,兄でも類似する身体的特徴を認め,優性遺伝形式をとることからBeals症候群と臨床診断した.類似疾患との鑑別のために全身検索を行ったところ,心臓超音波検査にて左室のballooning(LVEDd = 21.9mm),心筋の菲薄化,心尖部で心筋緻密化障害を思わせる所見と,極軽症の心室中隔欠損症 2 型を認めた.一方,左室収縮能に異常は認められなかった(LVEF = 62.1%).一般に,Beals 症候群は心血管系の異常,眼異常所見を伴わないところからMarfan症候群と鑑別されるが,実際は大動脈弁輪部拡大を含む心血管異常を伴う例も報告され,Beals症候群の15%で先天性心疾患を認めたという.しかし,散見したところ心室のballooningや心筋緻密化障害の報告はなかった.<BP>興味深いことに,本症例の経過観察中,心室のballooningおよび心筋緻密化障害は改善傾向であった.また,患児の兄の心臓超音波検査では異常を認めなかったことから,発育・発達とともに患児の心筋は正常に近づく可能性が示唆された.Beals症候群の責任遺伝子であるFBN2は,糖蛋白であるfibrillin2をコードしている.fibrillinは細胞外基質の主要成分となるmicrofibrilを構成しており,特に弾性線維の豊富な組織で発現している.FBN2はMarfan症候群の責任遺伝子であるFBN1と高い相同性を持つ.この高い相同性のために心筋の発生過程でFBN1がFBN2の欠損を代償して,心筋障害が経時的に改善していく可能性が考えられた.

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