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当院における新生児Jatene手術の検討―BAS無効の 2 例を中心に―
東京都立八王子小児病院心臓血管外科1),東京都立八王子小児病院新生児科2),東京都立八王子小児病院小児科3)
厚美直孝1),長沼潤一1),中山至誠1),池上博彦2),清水信隆3),鳥羽恵美3),齋藤一郎3),仲本雅哉3),野間清司3)

新生児Jatene手術の成績を総括し,あわせて術前BASが無効と考えられた 2 症例について検討することを目的とした.【対象】1989年から2003年までに施行した19例.男女比は17:2.手術時日齢は 3~25日,体重は2.8~4.0kg.I 型16例,II型 3 例.冠動脈Shaher分類(Sha)は 1(11),2A(3),3B(1),4(1),5A(2),7A(1)であった.BAS施行11例のうち,BAS後の右房の酸素飽和度(Sat RA)が55%以下であった症例をBAS無効例とした.【結果】手術死亡は 3 例(16%)で,原因は右冠動脈損傷が 2 例(Sha 1,5A),出血が 1 例(Sha 1)であった.BAS施行例のカテ中のSat RAは68±12%であり,BAS無効例は 2 例であった.症例 1:38週 0 日,3,290g,男児.生後 1 時間にTGA I 型の診断でlipo PGE1開始.著しいreversed differential cyanosisを認め,生後 4 時間に新生児遷延性肺高血圧症の診断でNO吸入療法を開始.生後 6 時間にBAS施行.BAS前後で左房圧 3→3mmHg,Sat RA 57→53%であり,その後もSpO2が不安定であったため,日齢11までNO吸入を継続.日齢25に手術を施行.良好に経過し,11PODに退院.症例 2:41週 0 日,3,315g,女児.生直後TGA I 型の疑いでlipo PGE1開始.SpO2が60%台であったため,日齢 1 にBAS施行.BAS前後で左房圧21→20mmHg,Sat RA 50→51%であり,その後もSpO2の低値が続き,日齢 3 に緊急で手術を施行.術中心房間交通を認めた.胸水貯留が続いたが,45PODに軽快退院.【結語】(1)最近の手術成績は安定し異常冠動脈での救命も可能であった.(2)BAS無効例に対しては,NO吸入や緊急手術などの治療法の適切な選択により良好な結果が得られた.

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