P-II-C-6
V2~V4におけるS波,R/S比と心血管異常との関連
大分大学医学部小児科1),健康保険南海病院小児科2),緒方町立国保総合病院小児科3)
古城昌展1),川野達也1),斉藤 潔2),拝郷敦彦3)

【目的】心電図V2,V3,V4のS波の増高やpoor R wave progressionを示す症例があるが, 基礎疾患やその頻度の報告が少ないため,V2~V4のS波,R/S比と心血管異常との関連について検討する.【方法】対象は大分大学附属病院小児科を受診し,正常と診断した対照群21例[男 9 例,女12例,3 カ月~15歳(6.1±4.9歳)]と疾患群69例[男38例,女31例,1 カ月~15歳(7.5±4.7歳)]で,12誘導心電図,胸部単純X線,心臓超音波検査を施行した.【成績】(1)疾患群は心室中隔欠損15例,心房中隔欠損 6 例,ファロー四徴,三尖弁閉鎖,不完全型心内膜床欠損,肺動脈弁狭窄がそれぞれ 1 例,大動脈弁狭窄 3 例,大動脈弁上狭窄 3 例,大動脈弁閉鎖不全 1 例,僧帽弁狭窄 1 例,僧帽弁逸脱 4 例,肥大型心筋症 5 例,心筋緻密化障害 2 例,冠動脈病変を伴った川崎病 4 例,起立性調節障害 3 例,不整脈 6 例.重度漏斗胸,神経性食思不振症がそれぞれ 1 例,ファロー四徴術後 5 例,心室中隔欠損術後 2 例,完全型心内膜床欠損術後,総肺静脈還流異常術後,Fontan術後がそれぞれ 1 例であった.(2)正常対照群のSV2は0.70~3.00mV,SV3は0.60~3.20mV,SV4は0.40~2.20mV,R/S V2は0.30~2.11,R/S V3は0.41~2.18,R/S V4は0.64~8.25.(3)疾患群ではSV2 > 3.00mVが10例,SV3 > 3.20mVが 5 例,SV4 > 2.20mVが 6 例.これら 3 つの基準をすべて満たす例は 4 例で,心室中隔欠損 2 例,大動脈弁狭窄 1 例,大動脈弁上狭窄 1 例.R/S V2 < 0.30が15例,R/SV3 < 0.41が12例,R/SV4 < 0.64が 7 例.これら 3 つの基準をすべて満たす例は 5 例で,大動脈弁狭窄,大動脈弁上狭窄,肥大型心筋症,心房中隔欠損,神経性食思不振症がそれぞれ 1 例であった.【結論】V2~V4のS波およびR/S異常を示した症例は69例中 7 例(10%)で,左室負荷疾患が71%.この 7 例ではV1とV6による心室肥大基準は満たさなかった.

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