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運動中の失神を契機に診断された左冠動脈右冠動脈洞起始の 2 例
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2),新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野3)
元木倫子1),塚野真也1),越後茂之1),八木原俊克2),佐藤誠一3)

【背景と目的】左冠動脈右冠動脈洞起始はまれな疾患で,左主冠動脈が大動脈と肺動脈の間を走行する場合,運動時に冠動脈狭窄を呈し心筋虚血を来す.失神で発症した例では不整脈やてんかんを疑われることが多く,時に致死的となる.今回運動中の失神で発見された 2 症例について診断に有用であった画像所見を加え,報告する.【症例】症例 1 は15歳男児.マラソン中の失神を何度か認め,精査されていたが原因不明であった.14歳時,走っている最中に失神し緊急入院.心電図でST低下と異常Q波を認めた.心エコーでは心室中隔と左室側壁のhypokinesisを認めたが,冠動脈の異常は明らかではなかった.急性心筋梗塞と診断された.症例 2 は13歳男児.マラソン中に失神を認めた.心電図,脳波検査は正常.再び陸上部の練習中に失神.救急車内の心電図変化とCPKの上昇を認めた.心エコーで大動脈と肺動脈の間に異常血管を認めた.2 症例とも心臓カテーテル検査で左冠動脈右冠動脈洞起始と診断され,当院紹介となった.運動負荷検査は危険性を考慮し,施行しなかった.2 症例とも心筋シンチは虚血所見を認めなかった.造影CTでは左冠動脈の起始異常が明瞭に描出できた.心臓カテーテル検査では左冠動脈が右冠動脈洞から起始し,大動脈と肺動脈の間を走行していた.2 症例ともfenestration of LCA to LCSの手術を施行し,術後の運動負荷心電図・心筋シンチでは虚血性変化は認めなかった.【結語】左冠動脈右冠動脈洞起始は突然死のリスクが高い疾患であり,早期に診断し外科治療を行う必要がある.運動中の失神においては本疾患も念頭におき,画像診断を進めていくことが必要と考えた.

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