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急性心筋梗塞を発症した先天性冠動脈瘻の 1 例
愛媛大学医学部小児科
村上至孝,檜垣高史,高田秀実,千阪俊行,井上直三,高橋由博,村尾紀久子,長谷幸治,太田雅明,貴田嘉一

【緒言】先天性冠動脈瘻は通常無症状の場合が多いが,短絡量が多い場合には心不全,肺高血圧を合併し,時に心筋虚血を来すことが知られている.しかし,小児期に急性心筋梗塞を合併することはまれである.今回われわれは,先天性冠動脈瘻により急性心筋梗塞を発症した 1 例を経験したので報告する.【症例】17歳,男児.重症三尖弁狭窄,肺動脈閉鎖のため,生後 4 カ月時に右BT shunt,4 歳 8 カ月時にFontan型手術を施行された.6 歳時,術後の心臓カテーテル検査にて,左右の冠動脈瘻(RCA-RV,LCA-RV)を指摘された.冠動脈瘻から右室への短絡量は多くなく,心筋シンチグラフィでperfusion defectは認められなかったことから,経過観察されていた.15歳時の心臓カテーテル検査および運動負荷心筋シンチグラフィでも同様の結果であった.17歳時,突然胸痛を訴え当科を紹介された.血液検査にて,CPK 2,058IU/l,CK-MB 110IU/lと心筋逸脱酵素の上昇を認め,心電図ではV2からV4のST上昇を認めた.心エコー検査では心尖部の壁運動低下を認めた.【心臓カテーテル検査】左室造影にて下壁,後壁から心尖部にわたり広範な壁運動低下を認めた.冠動脈造影にて左右の冠動脈から右室に流入する冠動脈瘻を認めたが,冠動脈の狭窄所見や血栓などは認めなかった.現在,利尿薬,βブロッカー,カルシウム拮抗薬,抗血小板薬の内服を行い臨床症状は落ち着いている.【考察】文献的には,冠動脈瘻が原因で小児期に心筋梗塞を発症したとの報告はまれである.本症例は 2 年前の運動負荷心筋シンチグラフィで虚血を示唆する所見はみられなかったにもかかわらず,急性心筋梗塞を発症した.治療の適応と考えられ,カテーテルによるコイル塞栓術を施行する予定である.

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