P-II-C-11
当科で経験した小児期心外膜炎の臨床的検討
埼玉県立小児医療センター循環器科
菅本健司,安藤達也,菱谷 隆,星野健司,小川 潔

心外膜炎は小児期心嚢水貯溜の原因として多くを占めるが,その総括的な報告は少ない.原因としては特発性,感染性,膠原病,悪性腫瘍性疾患,開心術後など多岐にわたるが個々の症例において原因を特定することは難しい.診断には心エコー検査にて心嚢内液の貯留,およびその臨床経過によってなされる.また,治療としては抗炎症剤,副腎皮質ステロイド剤などのほか,心嚢内液の量や臨床症状によっては心嚢穿刺や心嚢ドレナージ,心嚢開窓術なども行われる.今回,われわれは1983年 4 月から2003年10月までに心外膜炎として当科に入院した15症例について後方視的に検討した.開心術後 3 カ月以内,術後の少量の心嚢水貯溜,および川崎病の急性期の症例は除外した.15症例中,開心術後遠隔期に発症したものが 4 例(すべてASD direct closure),そのうち 2 例は内科的治療に反応,2 例は心嚢ドレナージおよび心膜切除,開窓術を要した.開心術歴のない11例のうち悪性腫瘍性疾患が 1 例(悪性リンパ腫),膠原病が 3 例(混合性結合組織病 1 例,若年性関節リウマチ 2 例),経過から感染性と思われるものが 2 例(すべて原因ウイルス,細菌等は特定できず),特発性が 5 例(うち 1 例はダウン症,ファロー四徴症合併例)であった.15症例中,心嚢穿刺やドレナージなどの外科的処置を要したものは 8 例であった.排液は初回排液量125~1,125ml,全排液量125~1,740mlであり,性状は漿液性が 5 例,血性が 3 例であった.また,反復例は 1 例のみであった.心エコー診断の発達した現在では心外膜炎の診断は困難ではないが,その原因の特定は困難な場合が多い.しかし,原因が見つかる場合は重篤な全身疾患の一症状であることが少なくない.開心術後の症例では心外膜の肥厚のため穿刺,ドレナージのほかに心膜切除,開窓術を要することが多かった.

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