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小児悪性疾患における心外膜炎の 3 例
広島大学大学院医歯薬学総合研究科小児科学講座
高本 聡,小西央郎

【はじめに】小児悪性疾患では原疾患のみならず種々の治療(薬剤,放射線,移植など)によりさまざまな合併症が生じうる.今回われわれは心外膜炎の 3 例を経験したので報告する.【症例】(症例 1)3 歳女児.2 歳時発症の神経芽細胞腫.化学療法,腫瘍摘出術後に自家骨髄移植施行(全身放射線照射も施行).サイトメガロウイルス(以下CMV)抗原血症(アンチゲネミア)陽性よりCMV感染症と診断.心嚢水を認め,CMVアンチゲネミアと心嚢水の量の相関からCMV心外膜炎と診断.移植後の易感染性を考慮し心嚢穿刺は施行せず.ガンシクロビル,CMV高力価IVIGなどの保存的治療で軽快した.(症例 2)18歳男児.12歳時発症の急性リンパ性白血病.化学療法後寛解に至ったが再発し,16歳時に同種骨髄移植施行.以後,原疾患は寛解を維持したが慢性GVHDの状態が持続した.免疫抑制剤,ステロイド投与されていたが肺アスペルギルス症を発症し抗真菌剤投与.著明な胸水,心嚢水を認め,心嚢穿刺でアスペルギルス抗原が検出,真菌感染による心外膜炎と診断した.抗真菌剤投与にもかかわらず心嚢水は改善せず,心不全,呼吸不全,腎不全のため死亡した.(症例 3)11歳男児.10歳時骨肉腫(大腿骨原発)発症.化学療法,手術施行したが肺転移,癌性胸膜炎を併発.化学療法後も胸水は改善せず,心嚢水も認めた.心嚢穿刺では悪性細胞を認め,癌浸潤による心外膜炎と診断.数回心嚢穿刺施行したが改善せず,また胸水も徐々に悪化し呼吸不全で死亡した.【まとめ】悪性疾患患児は易感染性の状態にあり,さまざまな感染症が臨床上問題となるが,本例のようなCMVやアスペルギルスによる心外膜炎はまれである.また,症例 3 のような癌の直接浸潤による心外膜炎もまれである.悪性疾患症例では種々の心疾患が生じる可能性があり,心電図,心エコー,X線などで定期的評価を行うことが重要と考えられた.

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