P-II-C-13
全心炎を呈し診断に苦慮したリウマチ熱の 1 例
東邦大学医学部第二小児科(大橋病院小児科)
中里純子,二瓶浩一,青木継稔,四宮範明

症例は 9 歳女児.入院 3 日前から発熱および発疹が出現した.某病院にて多型滲出性紅斑(EM)または溶連菌感染症と診断され抗生剤が処方された.しかし解熱せず紅斑は増悪し,水分摂取も不良となったため入院加療となった.AB-PCの経静脈投与にて治療を開始したが解熱せず,胸部X線写真にて心胸郭比の増大,および心エコーにて左室駆出率の低下,僧帽弁逆流および心嚢液貯留が認められ全心炎の病像を呈したため,第 8 病日よりステロイド・パルス療法を 3 日間施行したところ,速やかに解熱し心合併症も次第に改善した.急性期経過中に関節症状はなく,また他に特記すべき症状も認めなかった.ASO最高値509U(第30病日),抗核抗体陰性,補体系の有意な低下も認めなかった.自験例はリウマチ熱と診断せざるをえない症例と考えたが,近年本邦においてはリウマチ熱は激減しているうえに,まれな病型の組み合わせであることから診断に苦慮したため報告する.

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