P-II-C-14
Toxic shock syndromeで発症したS. aureusによる感染性心内膜炎の 1 例
旭川厚生病院小児科
梶野真弓,中右弘一,坂田 宏,沖 潤一

【はじめに】S. aureus(SA)による左心系感染性心内膜炎(IE)は合併症の頻度が高く,予後は不良である.今回,toxic shock syndrome(TSS)で発症し,多彩な経過をたどったSAによるIEの 1 例を報告する.【症例】17歳女性.基礎疾患なし.高熱,頭痛,悪心,嘔吐を主訴に内科に入院.軽度の意識障害,手足に発疹,血液検査上DICを認め,MINO,IVIG,ACV,glyceol,mPSL,FOYによる治療が行われたが,改善なく 9 病日当科に転科.入院時JCSII-20の意識障害,低血圧,全身の浮腫,頬部手足に赤色皮疹,手掌・足底に紫斑を認め,腹水貯留を認めたが,心肺に異常は認めなかった.転科時の血培でSAを検出し診断基準からtoxic shock syndrome(TSS)と診断した.この菌株のスーパー抗原遺伝子PCRではTSST-1 は陰性,SEG,SEK,SEL,SEMを有していた.菌血症およびTSSに対しVCM,ABPC/SBT,IVIG大量,Dexを投与し,臨床症状の改善を認めたが発熱およびCRP高値が続き,13病日心雑音を聴取し心エコーにて僧帽弁前尖に直径 5mmの疣贅を認め,IEの合併を確認した.抗生剤をPCG 3,600万単位/日,ABK 200mg/日併用に変更したところ速やかに解熱,16病日以降血培は陰性となった.27病日複視が出現,MRIにて小脳虫部に出血を認めた.塞栓による梗塞後出血と診断,heparinを中止,glyceolにて保存的に治療し改善した.塞栓症状の再発はなく,抗生剤変更後疣贅は縮小し,外科的処置をすることなく,40病日以降心エコーで検出できず内科的に治癒した.PCGは35日間,ABKは14日間投与した.ただし,僧帽弁前・後尖とも腱索の断裂による逸脱を合併し,重度僧帽弁逆流(MR)が残った.【まとめ】SA菌血症によりTSSを発症しIEを合併したまれな 1 例を報告した.IEを合併し,重度のMRを残した原因は,TSSの多彩な症状によって適切な抗生剤治療が遅れたことである.

閉じる