P-II-C-15
腹腔動脈,上腸間膜動脈狭窄を合併した腎血管性高血圧の 1 男児例
大阪医科大学小児科
井上奈緒,片山博視,森 保彦,玉井 浩

【はじめに】今回われわれは腹腔動脈,上腸間膜動脈,および両側腎動脈起始部に高度な狭窄を認めた 1 例を経験したので報告する.【症例】5 歳男児.【主訴】意識障害.【現病歴】2003年12月26日,右片麻痺,意識レベルの低下を来し,来院した.来院時,血圧240/130mmHgであり,JCS200で脳幹出血を認めた.【入院経過】頭部MRI,脳血管造影では多発性海綿状血管腫を認めた.腹部3D-CTでは腹腔動脈,上腸間膜動脈,両側腎動脈起始部に高度狭窄を,また腹部大動脈後壁には血栓を思わせる低吸収域を認めた.血液検査では白血球数,CRPは正常で,凝固線溶系の異常も認めなかったが,血沈が軽度亢進しており,画像上大動脈第一分枝の狭窄病変とあわせ,大動脈炎症候群が最も疑われた.ステロイド療法,抗凝固療法にて,血沈の亢進は改善傾向にある.高血圧に対してはニカルジピン,ニフェジピン,エナラプリル,スピロノラクトン,フロセミド,カルベジロールにて降圧を図ったが,収縮期血圧は160~180mmHgと十分な効果は得られず,頭蓋内再出血の危険も考慮し,準緊急で経皮的バルーン腎動脈形成術(PTRA)を施行した.右腎動脈は起始部で高度狭窄を認め,左腎動脈は起始部で完全閉塞しており,内腸骨動脈からの側副血行路が形成されていた.4mmのバルーンにて拡張を試みたが,ウェストは消失せず,狭窄は解除できなかった.現在は上記内服薬にニトログリセリンを併用し血圧コントロール中である.【考察】腹腔動脈,上腸間膜動脈狭窄を合併した腎血管性高血圧はまれで,本邦では報告がない.今回の症例は腎動脈の硬化が強く,PTRAが無効であった.頭蓋内再出血の危険性を考えると,血圧コントロールは重要であり,腎動脈再建術,自家腎移植などの外科的治療も含め,検討する必要がある.また,腹腔動脈,上腸間膜動脈の狭窄も高度であり,今後注意深い観察が必要である.

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