P-II-D-2
当センターにおける先天性心疾患患者の妊娠・出産の現状
大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科1),大阪府立母子保健総合医療センター産科2),大阪府立母子保健総合医療センター母性内科3)
北 知子1),中島 徹1),萱谷 太1),稲村 昇1),角由紀子1),末原則幸2),藤田冨雄3)

【目的】当センターにおける先天性心疾患患者の妊娠・出産の現状を把握し問題点を探る.【対象】過去10年の間当センターで出産した先天性心疾患患者 6 例.【検討項目】各症例における妊娠・出産前後の臨床所見や心エコー検査所見,出生児の身体所見等を検討した.【結果】心疾患はファロー四徴症(TOF)術後 4 例,心房中隔欠損(ASD)2 例.出産はのべ10例.TOFの 4 例は3.4±1.1(2.5~5)歳の間で最終手術を受けていた.ASDはいずれも未手術で 1 例は妊娠中に診断された.NYHA分類は全例 1 度,出産時年齢は27.7±2.3(21~32)歳であった.経過中妊娠中毒症状を 1 例で認めたほか,2 例で息苦しさや動悸が見られた.不整脈は 2 例で上室性期外収縮を認めたが妊娠・出産での増強はなかった.心エコー検査上では 6 例中 3 例で中等度以上の三尖弁閉鎖不全を,またTOFの 4 例では全例肺動脈弁閉鎖不全を中等度以上認めた.妊娠前期(あるいは妊娠前)と妊娠後期ではLVDdやEF/FS,逆流の程度やRVの拡大・弁逆流等大きな変化を見なかった.分娩様式は全例経膣だったが 6 例で持続硬膜下麻酔下にて行われ,6 例で吸引を併用された.母体に関して,妊娠前と出産時での体重変化は8.3±3.5(1.6~13.3)kg,出産は予定日より-0.3±10日であった.出生児の体重は3,101±518g(-0.1±1.3 SD)でおおむね正常範囲であったが,1 例胎便吸引症候群のために入院加療されていた.【まとめ】先天性心疾患患者でも安全に妊娠・出産が可能で児の状態も良好であったが,今後当センターでの分娩適応やそのフォロー方法に関しては十分な検討を要する.

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