P-II-D-3
TCPC conversion術後に肝静脈内に巨大血栓を形成した三尖弁閉鎖症の成人例
群馬県立小児医療センター循環器科1),群馬県立小児医療センター心臓血管外科2)
鈴木尊裕1),小林 徹1),金井貴志1),小林富男1),鈴木政夫2),村上 淳2)

【はじめに】Fontan型手術後に凝固能の異常と血行動態の変化により血栓形成を起こしやすいことが指摘されているが,今回われわれはTCPC conversion術後に肝静脈内に巨大血栓を形成した三尖弁閉鎖症(TA)の成人例を経験したので報告する.【症例】26歳,女性.3 カ月時に心雑音を指摘され,他院にてTA(Ib)と診断された.4 歳時に体肺動脈短絡術を施行され,7 歳時にFontan手術(RV-MPA吻合)が行われた.その後,当科外来を紹介され,アスピリン等の内服薬にて経過観察されていた.19歳時より四肢の冷感,易疲労性,起立性低血圧等の症状を認めた.その後,症状の増悪を認め,26歳時に精査加療目的に入院した.入院時心拍数82/分,血圧106/68mmHg,低体温(体温35.1℃),活動性低下,四肢冷感,肝腫大,肝機能障害(AST 28IU/l,ALT 42IU/l,LDH 281IU/l,TT 44%,PTINR 1.3,APTT 90秒)を認めた.血栓症はなく,心血管造影で右房収縮によるIVCおよび冠静脈洞への逆流を認め,TCPC conversion術を施行して症状,肝機能,凝固能の改善を認めた.術後 4 週に腹部エコーで一部がIVCに突出する肝静脈内巨大血栓を認めた.肺塞栓予防のためtemporary IVC filterを導管内へ留置後に抗凝固療法,抗血小板療法,血栓溶解療法を施行した.その後,再発時の肺塞栓予防にpermanent IVC filterを導管内に留置し,現在抗凝固療法,抗血小板療法を継続して外来通院中である.【結語】Fontan型手術後に巨大血栓を認めた症例の報告はこれまでに散見されるが,TCPC conversion後の報告は少ない.今回,TCPC conversion術後に血栓を形成した原因として,(1)肝うっ血の改善による凝固能の改善,(2)脱水傾向,(3)長期臥床が考えられた.

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