P-II-D-4
成人期Eisenmenger症候群のquality of lifeと管理における問題点
久留米大学医学部小児科1),八女中央病院小児科2)
姫野和家子1, 2),赤木禎治1),日高淑恵1),加藤裕久1),江上公康1),古井 潤1),前野泰樹1),石井正浩1),松石豊次郎1)

【背景】内科的医療の進歩によりEisenmenger症候群の長期生存が可能となっているが,成人期にはさまざまな問題が出現する可能性がある.【方法】当院の成人先天性心臓病外来フォロー中のEisenmenger症候群18例(男性 5 例,女性13例)の,臨床像,合併症,治療などに関して後方視的に検討した.【結果】年齢は,19歳から69歳で中央値32歳.手術不能と診断された年齢は,4 カ月から51歳で中央値6.0歳であった.Eisenmenger症候群の基礎疾患は,VSD 11例,DORV 2 例,PA with VSD 2 例,ASD 1 例,AVSD 1 例,TA 1 例.SpO2は,72%から94%で中央値83%.ability indexは,class I 8 例,class II 9 例,class III 1 例であった.結婚の有無は,既婚者 7 例,未婚者11例で,既婚者 7 例中 6 例が女性であった.男性 2 例,女性 3 例がフルタイム就業していた.女性13例中 2 例に妊娠の既往があり,1 例は妊娠10週に自然流産し,もう 1 例は切迫流産のため緊急搬送されIUGR児を出生した.合併症は,喀血 7 例,失神 4 例,脳梗塞 3 例,脳膿瘍 2 例,卵巣出血 2 例,痛風 2 例,感染性心内膜炎 1 例,不整脈 1 例,腎梗塞 1 例が認められ,主に18歳以降の成人期に生じていた.受診の間隔は,1 カ月から12カ月で中央値1.5カ月.内服治療はアスピリン 7 例,強心剤 5 例,利尿剤 5 例,ACE 3 例,Fe剤 3 例,Ca-blocker 1 例,経口PGI2 1 例であった.在宅酸素は 4 例に処方されたが,常時使用している者はいなかった.【結論】Eisenmenger症候群は,小児期に比較的安定した経過をたどっていても,成人期にはさまざまな合併症が出現する可能性が高い.現時点においてEisenmenger症候群に対する根本治療はないが,適切な管理や合併症に対する予防などによりquality of lifeや予後の改善が期待できると考えられる.

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