P-II-D-5
36歳で診断された先天性肺静脈閉塞の 1 例
九州厚生年金病院小児科
渡辺まみ江,城尾邦隆,弓削哲二,竹中 聡,岸本小百合,山村健一郎

【はじめに】先天性肺静脈閉塞は呼吸器感染・喀血などを繰り返すまれな疾患である.今回36歳で初めて診断に至った 1 例を経験したので報告する.【症例】36歳女性.乳児早期から繰り返す難治性肺炎と喀血がみられ,気管支拡張症として治療されていた.経年的に症状がやや軽減したため,18歳以降は対症的に治療され,精査の機会はなかった.紹介医初診後,CTで右肺動脈および右肺低形成の所見が指摘され,Scimitar syndromeなどの先天性心疾患を疑われ当科へ紹介となった.144cm・61kg,odd looking faceで中足骨合趾症などの小奇形あり.胸写はCTR 51.5%,右肺・右肺動脈の低形成がみられ,肺血流シンチはRt:Lt = 8:92と右肺血流が著明に低下していた.肺活量は正常の63.8%とやや低下,閉塞性呼吸障害はなかった.気管支鏡検査では,右側に強いびまん性の毛細血管拡張の所見がみられた.心臓カテーテル検査ではMPA 33/16(22),LPA 34/11(22),RPA 32/17(22),LPAW 6,RPAW 16,AO 178/106(134),Qs 4.6L/min/m2,Rp 3.5 R.U.I,Rs 28.7 R.U.I,Pp/Ps 0.19,肺動脈圧は軽度上昇,体血圧と右肺動脈楔入圧が上昇しており,心内のshuntはなかった.RPAの選択的造影を行うと枯れ枝状で,RPVは完全に閉塞し盲端となっていた.LPAは拡張し左肺血流は増加がみられたが,LPVは正常にLAへ還流していた.気管支動脈と奇静脈は著明に拡張していた.以上より他の心内奇形を伴わない右肺静脈閉塞症と診断した.高血圧・肥満に対して内科的な治療を開始,現在気管支動脈塞栓術,右肺切除術なども検討しつつ経過観察中である.まれな疾患であり文献的考察を加えて報告する.

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