P-II-D-6
当科における成人先天性心疾患症例の検討
東京大学医学部心臓外科1),東京大学医学部小児科2)
竹内 功1),河田光弘1),前田克英1),近田正英1),村上 新1),戸田雅久2),杉村洋子2),渋谷和彦2),賀藤 均2),高本眞一1)

先天性心疾患を有する成人(ACHD)への治療は本邦においても次第に大きな問題となってきている.成人期まで無症状で経過した症例や新生児/乳児期での手術を受け成人に達し問題を抱えている症例がその対象で,その数は30~50万人と推定されている.しかし,十分なフォローアップがなされていないのが実情である.当科は比較的早期より乳児期での手術介入を行ってきたが,小児期を過ぎた症例のフォローアップは十分でない印象がある.【目的】今回1998年から2003年までに手術介入した小児期以降の症例(13歳以上)について検討し,問題点と今後の対策を考察した.【結果】全手術症例658例中13歳以上の症例は74例(11.2%)でASDを合併した症例は33例,うちASD単独19例,+ 弁手術 6 例,+ PAPVC修復 4 例,+ maze手術 1 例であった.VSD症例は 9 例でVSD単独 5 例,+ TCRV 2 例,+ IE 1 例,+ AVR 1 例であった.maze手術が合計 2 例,小児期に放置されていた症例に対するFontan型手術 5 例,再弁置換,conduit change,流出路狭窄解除術などの症例が15例,冠動脈瘻 2 例,Rastelli 1 例,Bentall型手術 2 例であった.1 例に死亡を認めた.再手術症例は24例(32.4%)で,大多数は初回手術のASD/VSDであった.過去 6 年間のACHD症例の検討では,小児期での手術を受けずに成人期に達した症例が 6 割以上を占めていた.比較的早期より乳児期での手術介入を行ってきた当科においても,乳児期耐術症例が経過観察中に新たな問題を起こして手術となった症例は少なく,十分なフォローアップがなされていない可能性が示唆される.これらの症例が適切に医療機関を受診しフォローアップされるような環境作りが必要と考えられた.

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