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成人心室中隔欠損症に合併した感染性心内膜炎の外科治療
埼玉医科大学心臓血管外科1),埼玉医科大学小児心臓科2)
桝岡 歩1, 2),朝野晴彦1),岡村長門1),尾崎公彦1),山火秀明1),阿部馨子1),今中和人1),横手祐二1),許 俊鋭1)

【緒言】さまざまな理由で手術に至らなかった先天性心疾患患者が,感染性心内膜炎(IE)を契機に手術になることがある.IEを併発すると状態は重症化し,救命率も低下する.また,右心系の感染として肺梗塞,肺膿瘍を合併することも多い.今回,成人心室中隔欠損症に合併した感染性心内膜炎手術例に関して検討した.【症例および方法】1984年から2003年までに 8 例の成人先天性心疾患に合併した感染性心内膜炎手例を経験した.全成人先天性心疾患手術例345例中の2.3%にあたる.症例の内訳は,VSD I 型にバルサルバ洞動脈瘤で大動脈弁にIEを合併した例 3 例,VSD II型に三尖弁IEを合併した例 2 例,VSD II型に三尖弁,肺動脈弁IEを合併した 2 例,VSD II型に大動脈弁,肺動脈弁のIEを合併した 1 例であった.同時期のVSD I型にバルサルバ洞動脈瘤を合併した手術例は13例でIE合併は 3 例(19%),成人VSD例は 8 例でIE合併は 5 例(38%)と高率であった.以上の症例の手術成績と特徴について検討した.【結果】VSD I 型にバルサルバ洞動脈瘤で大動脈弁にIEを合併した 2 例が敗血症,人工弁感染にて死亡した.VSD 5 例のうち肺膿瘍を 2 例に合併したが,死亡例はなかった.術式はVSDパッチ閉鎖と大動脈弁置換 3 例,VSDパッチ閉鎖に三尖弁置換 2 例,大動脈弁置換と肺動脈弁vegetation切除 1 例,VSDパッチ閉鎖と三尖弁vegetation切除 2 例,冠動脈の閉鎖とvegetation切除 1 例であった.VSDパッチの再感染はなかったが,挿入された人工弁感染は 2 例あり,いずれも再手術を行ったが死亡した.【結語】成人先天性心疾患に合併した感染性心内膜炎手術例の頻度は高くないが,その手術死亡率は高かった.特に,人工弁を使用する例に関しては成績は不良であり,注意を要する.

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