P-II-D-9
在宅酸素療法を行った小児循環器疾患の予後―チアノーゼ群・肺高血圧群間の比較検討―
広島市立広島市民病院小児循環器科
木口久子,鎌田政博,木村健秀

【背景】近年,在宅酸素療法(HOT)の適応は循環器領域においても広がりつつある.【目的】心疾患に対するHOT施行例の臨床像を明らかにすること.【対象・方法】対象は1999年以降,原発性肺高血圧を含む心疾患に対してHOTを施行した27名で,これを(1)チアノーゼ群17例,(2)肺高血圧群10例に分け検討した.【結果】対象は全HOT施行例の30%に相当,男女比は 4:5,基礎疾患はチアノーゼ群:PA/VSD 6 例,SV + PS 3,TA 3,PA/IVS 1,TrA/PS 1,c-TGA/PS 1,SV/TGA 1,肺高血圧群:VSD/PH 2 例,PDA/PH 2,PPH 2,RCM 2,ASD/PH 1,CAVC 1 であった.染色体異常は21-trisomy 3 例,22q11.2欠失 4 例,11q- 1 例で,21-trisomyはすべて肺高血圧群に,22q11.2欠失はチアノーゼ群に属していた.HOT開始年齢は,チアノーゼ群 3~167カ月(中央値20カ月),肺高血圧群 2~138カ月(中央値7.5カ月)で,開始後のSpO2平均値はチアノーゼ群で75.2%から81.9%,肺高血圧群で92.9%から98.8%と上昇していた.状態が改善し,HOTを中止した症例はチアノーゼ群 3 例,肺高血圧群 3 例で,中止までの期間は前者で平均10.3カ月,後者で平均7.7カ月であった.肺高血圧群のうち術前の肺血管抵抗(Rp)が 8 単位・m2以上(平均10.2±2.1)であった 5 例では,術後にRpは4.5±1.2へと低下していた.【結果】チアノーゼ群,肺高血圧群ともにHOTにより,症状はやや改善したものの,チアノーゼ群のHOT移行例における死亡率は41.1%と非常に高く,外科治療による解剖学的修復が不可能な場合には予後不良と考えられた.

閉じる