P-II-D-11
当施設における肺動脈弁上狭窄 5 例の臨床的検討
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学1),京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科2)
河井容子1),田中敏克1),坂田耕一1),白石 公1),糸井利幸1),濱岡建城1),山岸正明2)

【背景】肺動脈弁上狭窄(SVPS)はWilliams症候群などにみられるまれな疾患であり,治療方針に苦慮する場合が多い.【目的】SVPSの臨床・形態的特徴および治療・予後に関する後方視的検討.【対象および方法】対象は1999年以降に当科で心臓カテーテル検査を施行したSVPS男児 3 例,女児 2 例.この 5 例(初回カテーテル検査時年齢 2 カ月~8 カ月)について,(1)造影上での形態的特徴,PA index,右室圧,合併心奇形,(2)選択した治療方針とその結果を検討した.【結果】Williams症候群と診断されたのは 1 例のみであった.全例に肺動脈弁上の砂時計状狭窄とその末梢に狭窄後拡張と思われる瘤状の突出を認めた.PA indexは60~776(中央値287),右室圧は75~108mmHg(中央値77mmHg)で,ばらつきが多く一定の傾向は認めなかった.合併心奇形として,大動脈弁上狭窄または低形成 4 例,多発性の末梢肺動脈狭窄 1 例,single coronary artery 1 例,筋性部心室中隔欠損 1 例を認めた.バルーン血管形成術を施行したが効果なかった症例(右室圧77mmHg),右室圧が108mmHgであった症例,高度の大動脈弁上狭窄を合併した症例の計 3 症例では,外科的治療を選択し,狭窄は良好に解除され,術後再狭窄は認めていない.多発性末梢肺動脈狭窄を合併した症例および右室圧が76mmHgの症例は自然軽快を期待して経過観察の方針とし,前者はエコー上改善傾向,後者は 1 年後のカテーテル検査で増悪を認めず,さらに経過観察の方針とした.【結語】SVPSは合併心病変として大動脈弁上狭窄・低形成を高頻度に(5 例中 4 例)認めたが,Williams症候群は 1 例のみであった.外科的治療を選択した症例における治療成績は良好であった.一方,経過観察とした症例においても改善傾向を認めるか,若しくは病態の進行を認めなかった.さらに症例を蓄積し,合併心病変と併せて,個々の症例において慎重に手術適応とその至適時期を検討していく必要があると考えた.

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