P-II-D-15
成人動脈管開存症の検討
弘前大学医学部第一外科
板谷博幸,鈴木保之,皆川正仁,久我俊彦,小野裕逸,福井康三,福田幾夫

当科で行われた成人動脈管開存症手術症例を後方的に検討し,術式,成績について検討したので報告する.【対象】1977~2003年に行われた成人動脈管開存症手術症例15例を対象とした.年齢は48歳±17(19~76),男性 4 人,女性11人であった.動脈管開存以外の心合併症は僧帽弁閉鎖不全 + 三尖弁閉鎖不全,大動脈弁狭窄,上行弓部大動脈拡大などが 3 例で認められた.これらについて,術式別に問題点について検討した.【結果】心胸郭比は58±12%,肺動脈圧:33±17mmHg(収縮期)/15±8(拡張期),Qp/QS:2.2±1.5,L-R shunt:44±21%であった.手術は,左開胸では,結紮術 2 例,切離術 2 例,胸骨正中切開では,肺動脈切開によるアプローチで動脈管閉鎖を行った症例が 9 例,大動脈側をパッチ閉鎖した症例が 2 例であった.開胸で行った症例のうち 1 例で大動脈壁を損傷し,止血のため大動脈を遮断し修復を行った.また,結紮した 1 例では遠隔期に遺残短絡を認めている.胸骨正中切開の症例は全例体外循環下に手術を行った.肺動脈からアプローチした症例は,動脈管の血流をコントロールするためにバルーンを使用したが,1 例で動脈管が細くバルーンが挿入できないため循環停止を併用した.閉鎖方法は,直接閉鎖 5 例,パッチ閉鎖 4 例で,パッチ閉鎖の 1 例でパッチ周囲のleakをコントロールできず,動脈管結紮を追加した.大動脈側をパッチ閉鎖した症例は,循環停止下に手術を行ったが,大動脈側に石灰化を認めた症例でパッチ周囲の大動脈壁からの出血を生じ,上行弓部胸部下行大動脈置換術を追加した.全例が現在も生存し,良好に経過している.【考察】若年者であれば,小児期と同様に開胸による切離術が可能であると考えられた.中年期の症例では残存動脈管が瘤化する可能性があるため,大動脈側パッチ閉鎖を,高齢者では大動脈壁の石灰化,脆弱性を考えて,肺動脈側パッチ閉鎖が妥当な術式だと考えられた.

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