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長崎県における学校管理下の突然死―心臓性突然死について―
長崎大学医学部小児科
山本浩一,大坪善数,岡崎 覚,本村秀樹,手島秀剛,宮副初司,森内浩幸

【目的】小児突然死は成人に比べ少なく,剖検率の低い本邦では疫学調査に限界があり実態把握は困難である.まとまった報告も少なく小児突然死の実態が把握できるのは学校管理下のみである.実際心臓性突然死の多くは学校管理下に起きており,その分析は心臓性突然死の予防医学上重要と考えられる.今回われわれは,長崎県の1974年度以降30年間の学校(幼稚園~高等学校)管理下の突然死例に関して検討を行った.【結果】学校管理下の突然死例は35例であった.突然死例のうち,明らかな呼吸器,脳神経系等のほか疾患を除外される症例を心臓系突然死としたところ29例であり,全突然死例の83%に相当した.内訳は,男性17例,女性12例で年齢は13.9±3.59歳と中高校生に多かった.発生年度別では,1974~1983年度 7 例,1984~1993年度12例,1994~2003年度10例と減少傾向はなかった.循環器系の基礎疾患を持つ例は 8 例で,心筋症 5 例,先天性心疾患 1 例,Marfan症候群 1 例,巨人症 1 例であった.他の21例のうち,2 例に心電図異常を認めたが,適切な経過観察はされていなかった.また 1 例は,2 回の失神の既往がありてんかんとして加療されていた.発生状況は,体育,部活動などの運動中が22例で特に持久走時が 9 例であった.現場救命処置は,心臓マッサージと人工呼吸併用率は52%であった.病院到着時間は発症21±7.58分後で,死亡判定は発症5.15±8.9時間後で,蘇生は困難であることが示唆された.【考察】現在心筋症などの致死性基礎疾患群に対しては,抗不整脈薬の進歩,ICDの普及により突然死の予防効果が期待される.しかし今回の研究で,経過観察が不十分な例,器質的疾患が把握不能な例を認めた.健診,医療体制の改善に加え,現場での一次救命処置の普及,さらに将来的には学校での自動体外式除細動器の配備,public access defibrillationの施行が望まれる.

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