P-II-E-3
学校心電図検診におけるQTc延長児(者)への対応
国立療養所青森病院小児科
五十嵐勝朗

【はじめに】学校心電図検診でQTc延長児(者)が発見され,その対応が必ずしも統一されていない.要するにQT延長症候群とQTc延長を混同し,QTc延長児(者)に不要な不安を与えていることが懸念される.実例を提示し指導のあり方を検討した.【実例】症例 1:S. N(13歳,女児).家族歴・既往歴:特記することなし.現病歴:2001年に中学 1 年の心電図検診でQTcが467msecを指摘され,突然死の危険性があるとして運動制限を指導された.1 年後に再検査のために当科を受診した.症例 2:S. Y(14歳,女児),症例 3:S. K(12歳,女児).家族歴・既往歴:2 人は姉妹である.現病歴:症例 2 は2002年に中学 1 年の心電図検診でQTcが513msecを,症例 3 は2003年に中学 1 年の心電図検診でQTcが504msecを指摘され,当科を受診した.症例 4:T. A(6 歳,女児).家族歴・既往歴:4 歳時に驚愕による失神発作の既往あり.現病歴:2000年に小学 1 年の心電図検診でQTcが510msecを指摘され当科を受診した.【考察】QT延長症候群の診断基準は,大基準として,(1)QTc≧440msec,(2)ストレス誘発性失神発作,(3)QT延長症候群の家族内発生,小基準として,(1)先天聾,(2)T波の交互脈,(3)心拍の減少,(4)心室再分極異常(T波の異常)であり,判定として,(1)大基準の 2 項目を満たす,(2)大基準 1 項目 + 小基準 2 項目を満たす,とある.症例 1 はQTc延長児,症例 2 と症例 3 はグレイゾーン,症例 4 はQT延長症候群と診断できる.【結論】QT延長症候群と診断した場合は,失神発作を予防する意味から強い運動のみならず,通常の作業や運動も制限する.実例の中にはQTc≧440msecを根拠にQT延長症候群として運動制限を指導され,そのうえ「突然死の危険性がある」と言われ不安な生活を送っている被検者がいた.生活指導を行う時は失神発作の既往や経過観察して慎重に行うことが望まれる.

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