P-II-E-4
学校集団健診と大動脈縮窄
神戸市立中央市民病院小児科
芳本 潤,山川 勝,冨田安彦,久保田優

【目的】学童集団心健診で初めて診断された単純大動脈縮窄と,健診でもチェックされずに通過しその後に初めて診断された同症の問題点を検討した.【対象と方法】5 年以内に心カテ,アンジオや手術が施行された大動脈縮窄で,学童集団心健診を受け,それ以後に初めて同症と診断された 5 例の症状,診断や治療について検討した.【症例】症例 1 は 6 歳11カ月の女児.心音図上の心雑音を指摘され,大動脈第 3 枝直前に下方から局在した収縮期圧較差約20mmHgの縮窄がみられた.手術が検討されたが当面経過観察のみとなった.症例 2 は,7 歳 5 カ月の女児.心音図での心雑音を指摘され,第 3 枝の後に局在した圧較差約25mmHgの縮窄を認めた.端々吻合の手術が行われ順調に経過している.症例 3 は,7 歳 8 カ月の女児.心音図上の心雑音を指摘され,当初は心エコーで細い動脈管開存のみと診断され,心カテ,アンジオ検査で初めて第 3 枝直後の局在した圧較差約20mmHgの縮窄が診断された.端々吻合の手術がなされたが術後に乳び胸を来した.症例 4 は11歳の男児.学童集団心健診の心音図で心雑音を指摘されるも,二次健診や専門医を受診せず11歳の時クモ膜下出血を来し初めて,圧較差約45mmHgの縮窄が診断されたが,重度障害を残した.症例 5 は,20歳の女性.学童心健診のチェックも全く受けずに通過し,20歳の血圧健診で初めて240/100mmHgの高血圧を指摘された.第 3 枝の後に圧較差90mmHgの縮窄を認め,手術が行われた.この症例は第 3 枝起始部と腎動脈の狭窄も認められ,高安大動脈炎も疑われている.【結語】大動脈縮窄は,学童心健診では心音図上の心雑音で指摘されることが多く,縮窄の程度は軽症例が多かった.部位や形状はさまざまで,手術や投薬の適応や,生活管理指導に苦慮することがあった.一次健診でチェックされた児童が二次健診や専門医を受診しない問題もあった.

閉じる