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学校心臓検診でQT延長症候群と診断され,脳波異常を呈した 1 例
島根大学医学部小児科
石崎 茜,林 丈二,安田謙二

【背景】学校心臓検診により抽出されるQT延長症候群(LQT)では症状のないことが多いが,まれにtorsades de pointesなどの不整脈を誘発し,意識消失や突然死に至ることがある.しかし,一般に意識消失の原因としては,心原性以外に,てんかん,迷走神経性,起立性低血圧,脳血管性などがあり,診断には注意が必要である.今回われわれは,運動時意識消失発作を呈し,学校心電図検診でLQTと診断されたが,精査により心電図異常だけでなく脳波異常を呈した症例を経験したので報告する.【症例】7 歳男児.家族歴として,父と父方祖母に意識消失の既往あり.患児は 2 歳より運動時の意識消失がみられていたが,発作後しばらくして回復することから,無治療で経過観察されていた.7 歳時の小学校心臓検診でQT延長を指摘され,当科を紹介された.初診時の安静時標準12誘導でQTc 0.475秒,ホルター心電図・トレッドミル心電図では病的不整脈を認めず経過観察されていたが,当科にて静脈確保の際に,突然動きが止まり,呼びかけに応答しない状態が約 2 分間みられた.バイタル徴候は安定し,心原性の意識消失とは考えにくいため,さらに脳波,MRI,MRAを施行した.脳波で 3~4Hzの数秒間持続する右優位のspike and waveが頻回に確認され,MRIでは左前頭部にクモ膜嚢胞が認められた.MRAで異常を認めなかった.【考察】てんかん発作時に不整脈を合併したり,意識消失発作時にQT延長を認める報告例がある.本症例は,頻回に脳波異常を認め,安静心電図でQTcの変動が大きいことから,脳波異常がQTの延長に関与している可能性が考えられた.今後,脳波と心電図波形との関連を精査検討する必要があると思われた.【結論】小児の意識消失では,心電図上QT延長を認めても,脳波異常などの心原性以外の原因検索を行う必要がある.

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