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血漿BNP濃度は心室中隔欠損症の肺血管病変を判別できるか?
秋田大学医学部小児科
豊野学朋,原田健二,田村真通,青木三枝子,石井治佳,島田俊亮

【背景】心室中隔欠損症例において血漿BNP濃度が左室容量負荷に応じて増加することが知られている.一方,肺高血圧症を伴う大きな心室中隔欠損孔(large VSD)を有する症例では,高肺血流量─低肺血管抵抗群と低肺血流量─高肺血管抵抗群という異なった病態が存在し,両者を判別することは治療上,極めて重要である.しかしlarge VSD例における血漿BNP濃度に関する報告はない.【目的】large VSD症例において,血漿BNP濃度と肺体血流比,肺血管抵抗,肺体血管抵抗比との関係を検討すること.【対象】large VSD 18例(年齢 2 カ月~27歳,中央値 4 カ月).有意な僧帽弁逆流あるいは大動脈弁逆流を有する症例,左室収縮障害を有する症例は除外した.【方法】血漿BNP濃度測定のため静脈血を採取し,心臓カテーテル検査より得られた肺体血流比,肺血管抵抗,肺体血管抵抗比を算出した.【結果】対象とした18例の肺体血圧比は0.51~1.02(中央値0.88),肺体血流比は0.98~5.25(同1.92),肺血管抵抗は1.57~16.02単位(同5.68単位),肺体血管抵抗比は0.11~0.89(同0.32)であった.血漿BNP濃度(5.5~195pg/ml)の中央値が30pg/mlであったため,これを閾値とし以下の検討を施行した.(1)肺体血流比の選別:血漿BNP濃度30pg/ml未満では感度・特異度ともに78%,陽性予測率70%で肺体血流比2.0未満であった.(2)肺血管抵抗の選別:血漿BNP濃度30pg/ml以上では感度75%,特異度83%,陽性予測率89%で肺血管抵抗 6 単位未満であった.なお血漿BNP濃度が10pg/ml未満の 4 例は全例ともEisenmenger化していた.(3)肺体血管抵抗比の選別:血漿BNP濃度30pg/ml未満では感度86%,特異度100%,陽性予測率88%で肺体血管抵抗比0.35以上であった.【結論】血漿BNP濃度はlarge VSD症例における肺血管病変のスクリーニングテストとなりうる可能性が示された.血漿BNP濃度30pg/ml未満のlarge VSD例では肺血管抵抗値の実測が必要と考えられた.

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