P-II-E-10
先天性心疾患におけるTie-2,VEGF-2Rの発現に関する検討
東京慈恵会医科大学小児科1),東京慈恵会医科大学心臓血管外科2)
浦島 崇1),河内貞貴1),齋藤亮太1),寺野和宏1),藤原優子1),衛藤義勝1),森田紀代造2)

【背景】チアノーゼ性心疾患,特に肺血流減少を伴った症例において,肺内への新生血管は,肺血管抵抗の増強,肺動脈クリーゼを誘発し患者の生命予後に大きく関与する因子である.近年その発症機序にVEGFが関与していることが明らかになったが,その詳細な機序に関しては不明である.【方法】先天性心疾患で心不全もしくは周術期に死亡した患児の肺病理組織におけるTie-2,VEGFR-2 の発現程度を免疫染色で確認した.対象例は肺血流が減少しているチアノーゼ性心疾患群 6 例(右心系単心室 + 肺動脈狭窄 2 例,両大血管右室起始 + 肺動脈狭窄 1 例,肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損 2 例,ファロー四徴 1 例),肺血流が増加しているチアノーゼ性心疾患群(左心低形成 4 例,総動脈幹症 1 例),非チアノーゼ性心疾患群(Down症候群 + 房室中隔欠損 3 例,心室中隔欠損 1 例).【結果】肺血流減少のチアノーゼ性心疾患においてTie-2,VEGFR-2 の発現を全例で認めた.肺血流増加のチアノーゼ性心疾患においてはTie-2,VEGFR-2 の発現は 1 例において認めた.非チアノーゼ性心疾患群においてはTie-2,VEGFR-2 いずれも発現は認めなかった.【考察】Tie-2 はAng(アンギオポエチン)の受容体,VEGFR-2RはVEGFの受容体である.血管新生はAngシステムとVEGFシステムの 2 系統によって調節されていることが明らかになっている.またチアノーゼ性心疾患で認められる低酸素血症も血管新生を誘導する因子である.チアノーゼ性心疾患における血管新生にはこれらの関与が示唆されたが,非チアノーゼ性心疾患においてもアンギオポエチンが肺高血圧の発症に関与しているとの報告があり今後検討が必要と考えられる.

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