P-II-E-11
著明な肺小動脈の低形成を認めた新生児遷延性肺高血圧症の 1 例
山形大学医学部発達生体防御学講座小児医科学分野1),米沢市立病院小児科2),日本肺血管研究所3)
仁木敬夫1),鈴木 浩1),赤羽和博1),佐々木綾子1),若林 崇1),田辺さおり1),早坂 清1),岡田昌彦2),八巻重雄3),前田克英3)

新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)の病因として,先天的な肺小動脈の中膜肥厚などが報告されているが,肺小動脈の低形成がみられた報告はない.今回,著明な肺小動脈の低形成を認めたPPHNの 1 例を経験したので報告する.症例は日齢 1 の女児.母体は出産前日に発熱のためインドメタシンを投与されていた.在胎36週 3 日,体重3,760g,Apgar score 9 点,自然分娩で出生した.著明な羊水混濁を認めた.生後 2 時間から,チアノーゼと多呼吸が出現し,酸素を投与された.日齢 1 に呼吸状態が改善せず,近医に転院した.呼吸困難があり,room airで経皮的酸素飽和度は30%と著明な低酸素血症を認め,気管内挿管した.気管内吸引物に胎便はなかった.血液検査で白血球数31,400/μl,CRP 7.8mg/dlと炎症反応を認めた.胸部X線で,心胸郭比55%,肺野に斑状陰影を認めたが,肺うっ血像は認めなかった.チアノーゼ性先天性心疾患を疑われ,山形大学医学部小児科に緊急搬送されたが,搬送中に心肺停止となり心肺蘇生下に入院した.蘇生されたが,瞳孔は散大していた.心エコー図では,右室圧と左室圧は等圧で,径3.3mmの動脈管が開存し左右短絡を認め,卵円孔では右左短絡を認めた.他の心奇形は認めず,肺静脈は左房に還流していた.血液培養は陰性で,母の膣培養でB群連鎖球菌は陰性だった.PPHNと診断し,ドパミン,ドブタミン,一酸化窒素吸入とHFOを開始したが効果なく,日齢 2 に死亡した.両親から肺の病理解剖のみ承諾が得られた.中膜肥厚は新生児としては正常範囲であり,内膜肥厚は認めなかったが,著明な肺小動脈の低形成が認められた.肺胞に胎便や硝子膜形成は認められなかった.PPHNの中には,先天的な肺小動脈の低形成によるものが存在すると考えられた.

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