P-II-E-13
長期間の静注プロスタグランジンI2投与を行った高度肺高血圧を伴う右肺動脈近位部欠損・動脈管開存の 1 症例
関西医科大学小児科1),関西医科大学胸部心臓血管外科2)
寺口正之1),寺西顕司1),藤井喜充1),池本裕実子1),辰巳貴美子1),吉村 健1),角田智彦2),今村洋二2)

【はじめに】静注プロスタグランジンI2(PGI2)は,原発性肺高血圧の治療に画期的な進歩をもたらした.しかし高度肺高血圧を伴った先天性心疾患の治療への応用はまだ少ない.今回われわれは,長期間のPGI2を投与し手術が可能となった高度肺高血圧を伴う右肺動脈近位部欠損・動脈管開存の 1 症例を経験した.現在,静注PGI2を中止でき経過良好である.経過の一部は第 2 回フローラン研究会で報告した.【症例】1 歳 7 カ月の女児.生後 2 カ月時に嘔吐と心雑音とを主訴に来院し,右肺動脈近位部欠損・動脈管開存・肺高血圧と診断した.肺高血圧は高度(Pp/Ps:1.25)で,酸素負荷,NO負荷に反応がなかった.生後 5 カ月時の動脈管閉塞試験では,Pp/Psは1.31から2.29に上昇し体血圧が低下したため,動脈管の閉鎖は不可能と判断した.2002年11月28日(生後 5 カ月と23日)からPGI2を 2ng/kg/分で開始し,7.6ng/kg/分まで増量した.生後11カ月時に,動脈管結紮術と右内胸動脈をフリーグラフトとした主肺動脈から右肺動脈への短絡術とを行った.術直後のPp/Psは0.71であった.PGI2を減量すると肺高血圧が強くなるため,9.2ng/kg/分で投与を続けた.1 歳 3 カ月時には,全身麻酔下(FiO2 = 0.5)で,Pp/Psは0.64,Qp/Qsは1.15であった.軽度の遺残動脈管開存がみられたが,グラフトを介しての主肺動脈から右肺動脈への血流は良好であった.経過が良好なため静注PGI2を漸減し経口PGI2を開始したところ,2003年12月10日(1 歳 6 カ月,静注PGI2開始後 1 年)で静注PGI2は中止できた.現在,在宅酸素療法を行い経過観察中である.【考案】先天性心疾患に伴う高度肺高血圧に長期間の静注PGI2投与を行い,外科治療が可能になったと考えられた.

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