P-II-E-14
開心術後肺高血圧症(PH)に対する経口シルデナフィル(SIL)の使用経験
京都大学医学部心臓血管外科1),京都大学医学部小児科2)
根本慎太郎1),池田 義1),土井 拓2),平海良美2),馬場志郎2),小山忠明1),榊原 裕1),仁科 健1),大野暢久1),米田正始1)

【背景】高肺血流を伴う先天性疾患に対する術後PHは今日においても完全には解決されていない予後決定因子の一つである.従来のPH治療法(cGMP産生刺激)に加えホスホジエステラーゼ 5 型を選択的に阻害する第 3 世代の治療法(cGMP維持)としてSILの経口投与をわが国の実情に見合う形で応用したので学会会員諸氏のご批判を仰ぎたく症例を提示する.【対象・方法】患児家族の同意のもと 1 回量0.5mg/kgBWのSILを経鼻胃管から投与を開始し,循環動態のモニタ下に 4 時間ごとに0.5mg/kgBWずつ段階的に増量し,最大2.0mg/kgBWで 4 時間ごとに注入する投与法とした.また,併用静注薬終了後翌日より段階的に漸減離脱した(京都大学医学部の倫理委員会の承認).症例 1:5 カ月ダウン症女児.完全型房室中隔欠損症に対しtwo patch法で修復.症例 2:1 歳ダウン症女児.心室中隔欠損症(VSD)に対しVSDパッチ閉鎖.症例 3:3 カ月男児.VSDおよび大動脈縮窄(CoA)に対し一期的VSDパッチ閉鎖 + CoA修復.症例 4:1 歳男児.両大血管右室起始,低形成左室,およびCoAに対しCoA解除,肺動脈絞扼術,および両方向性グレン術後状態.順行性血流による左側PHに対して主肺動脈離断 + 中心肺動脈パッチ拡大術.全例体外循環離脱時からTNGとPGE1の持続投与を開始.集中治療室入室後は沈静を維持し,おおよそ術翌朝より一酸化窒素(NO)ガスの吸入の併用を開始.症例 1~3 では肺動脈圧が体血圧以上となる頻度が増したため,また症例 4 では上大静脈圧の高度上昇が遷延したためSIL投与を開始.肺動脈圧は著明に減少し,呼吸器とともにNOガスの離脱を開始し,抜管後の静注薬の中止も容易であった.SIL投与中の副作用や漸減離脱中の肺動脈圧再上昇は認めなかった.【結語】PHに対するSILは効果安全性とも有望である.今後汎用プロトコールとしての確立を目指している.

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