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重症原発性肺高血圧症の思春期例におけるsildenafilの長期効果(第 2 報)―sildenafil療法の限界―
国立病院長崎医療センター小児科1),長崎大学医学部小児科2)
手島秀剛1),本村秀樹1),吉永宗義1),宮副初司2),森内浩幸2)

【背景】われわれは前年度の学術総会で重症肺高血圧症思春期女児例に対するsildenafilの劇的な効果を報告した.その後およそ 1 年を経過し,患児の状態に変化がみられたため報告する.【経過】sildenafil投与開始後,運動能は著しく改善し,カルシウム拮抗剤,ジギタリスなどの併用薬剤の減量が可能となった.生活の質も劇的に改善したが,怠薬に伴い,beraprostを減量したところ,正常化していたBNPが277.9pg/mlまで再上昇し,労作時の息切れを感じるようになった.beraprostを再増量したところ,症状は消退し,BNPも92.4pg/mlまで低下したが,2003年秋以降,全身倦怠,息切れ,浮腫が目立つようになり,同年12月,sildenafil開始後21カ月で症状悪化のため再入院となった.入院時BNP 1,456.7pg/mlと著明に上昇しており,安静,持続的酸素吸入,PDE III阻害剤点滴静注による治療を行い,sildenafilを100mg/日より150mg/日へ増量した.症状は徐々に改善し,約 2 週間の経過で退院,外来管理へ移行した.退院後は比較的安静を保った生活をしており,自覚症状はほぼ消退していた.sildenafil増量 1 カ月後のBNPは618.3pg/mlへ低下していた.【考按】sildenafilは患児の症状および生活の質を劇的に改善したが,重症例ではberaprostの併用が必要と考えられた.症状はsildenafil療法開始後21カ月で再燃しており,重症の原発性肺高血圧症の進行はsildenafilでは阻止困難であることが明らかになった.今後,endothelin 1 拮抗剤など,原発性肺高血圧症の病因治療が可能な薬剤の発売が望まれる.

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