P-II-E-17
小児期心疾患における一酸化窒素関連物質の検討―左右短絡疾患について―
埼玉県立小児医療センター循環器科1),東京慈恵会医科大学小児科2)
小川 潔1),浦島 崇2),安藤達也1),菅本健司1),菱谷 隆1),星野健司1)

【目的】うっ血性心不全や敗血症,肺高血圧症(PH)などで一酸化窒素(NO)産生が増加することが明らかにされているが,小児期心疾患におけるNO動態には不明な点が残されている.昨年の本学会で各種の先天性心疾患におけるNO動態について報告したが,今回は左右短絡群についてさらに検討を加えた.【方法】対象は生後 4 カ月以上の左右短絡を有する先天性心疾患児47例で,PHなし22例,PHあり25例であった.疾患の内訳はVSD 21例,ASD 15例,CAVC 4 例,PDA 7 例であった.心臓カテーテル検査中に血液を採取し,血清を除蛋白したもの10μlを用いた.血中に放出されたNOはすばやく酸化され最終代謝産物であるNO3- に変換されるが,NO3- を銅-カドミウム還元カラムでNO2- に還元し,NO2- をグリース試薬と反応させ,生成された赤色のジアゾ化合物を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法(エイコム社製ENO-20)によりNO関連物質(NOx)として測定した.22μmol/l以下を正常値とした.【成績】PHあり群は54.7±47.8μmol/lで,PHなし群15.1±6.3μmol/lに比し有意に高値を示した(p < 0.001).NOxとPp/Psとの間には有意な相関が認められ(r = 0.66,p < 0.0001),NOxとPVR indexとの間にも有意な相関が得られた(r = 0.50,p = 0.0002).しかし,Qp/Qsとの間には相関は認められなかった.NOxとhANP値との間には弱い相関が認められた(r = 0.37,p = 0.093).Pp/Psが0.66以上の18例中 7 例でNOxが上昇していなかったが,他の上昇している例との間に差は認められなかった.【結論】左右短絡疾患におけるPHではNO産生が亢進している例が多かったが,NO産生が亢進していない例もある.その意義についてさらなる検討が必要である.

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