P-II-F-1
1 カ月時に著しいチアノーゼ,呼吸障害で発症したVSDを伴うRS肺炎の 1 例
日本医科大学小児科
山口和子,白井潤二,深澤隆治,小川俊一

【背景】RS感染は,特に先天性心疾患を有する乳児症例では重篤な呼吸障害を来すことが知られている.一方,VSDは先天性心疾患としては最も頻度が高いものであり,左右短絡であるため通常はチアノーゼを呈することはない.今回,1 カ月時にチアノーゼ,呼吸障害を主訴として緊急入院となったVSDのRS肺炎症例を経験した.【症例】1 カ月の女児.新生児期に心雑音からVSDと診断され,1 カ月後の再診を指示されていた.1 カ月健診数日前より咳嗽を認めていたが,健診当日,顔色不良に気付き来院した.来院時,著明な全身チアノーゼ,呼吸音の減弱を認め,SpO2 68%であった.チアノーゼ性心疾患を除外するため心エコーを施行したところ,著明な肺高血圧とVSD(II;6mm)およびPFOでの右左シャントを確認したため直ちに酸素の投与を開始した.血液ガスでは呼吸性アシドーシスと高炭酸ガス血症(pCO2 75.4Torr)を認めたが,胸部X線での所見は乏しく,原発性肺高血圧症の鑑別も考慮した.しかし,咽頭でのRS迅速診断陽性であったため,RSウイルスによる細気管支炎と診断し治療を開始した.翌日の胸部X線では両肺野の著明な浸潤影が出現し,呼吸不全は重篤であったが,幸い人工呼吸管理を要することはなく,症状の改善に至った.呼吸症状の改善を認めるのと反対にhigh flow PHが徐々に進行し,早期のVSD repairが必要とされた.【考案】今回の症例は,新生児期に残存する生理的肺高血圧状態が徐々に改善し,VSD,high flow PHに移行しつつあった時期に,たまたまRSウイルスに罹患,肺血管抵抗の増加に伴う著明な肺高血圧を合併した.その結果,心房,心室レベルでの右─左シャントが惹起され,著明なチアノーゼを呈することとなったと考えられる.肺うっ血を伴う先天性心疾患児によるRS感染症は呼吸器機能ばかりでなく,心血行動態に弊害をもたらす致死的感染症であり,ワクチンによる予防,迅速な診断と的確な治療が必要である.

閉じる