P-II-F-3
Fontan型手術後患者の血管内皮機能の検討―echoおよびstrain gauge plethysmographyを用いて―
東京女子医科大学循環器小児科
奥村謙一,中西敏雄,稲井 慶,中澤 誠

【背景】Fontan型手術は特殊な血行動態で,さまざまな術後合併症を伴うことが知られている.Fontan型手術後患者の心機能,運動能の低下は報告されているが,血管内皮機能に関する報告は少ない.非侵襲的な血管内皮機能測定法であるstrain gauge plethysmography(プレチスモ)およびエコーを用いてFontan型手術後患者の血管内皮機能を検討した.【対象】Fontan型手術後患者(F群)20例(6~41歳),同年代のコントロール(C群)11例(9~33歳)を対象とした.【方法】内皮依存性の血流増加は上腕動静脈を 4 分30秒間マンシェットにて圧迫し,圧迫を開放した直後の反応性充血での血流量の増加(プレチスモ)および血管径拡張(エコー)を測定し,安静時の値と比較した.内皮非依存性血流量増加は,ニトログリセリン舌下投与による血流量および血管径の増加を調べた.増加率は((駆血後血流量 - 駆血前血流量)/駆血前血流量)×100%として表した.以上の方法で得られた血管内皮機能と心機能を表す因子(心胸郭比,BNP値,左室内径短縮率,中心静脈圧,動脈血酸素飽和度,心係数)との相関を検討した.【結果】(1)駆血後血管径拡張はF群10.2±0.8%,C群19.2±2.8%とF群で有意に低かった(p < 0.001).(2)駆血後血流増加は,F群213.6±24.7%,C群478.3±81.9%とF群で有意に低かった(p < 0.001).(3)内皮非依存性血管径拡張および血流増加は,F群とC群で有意差はなかった.(4)血管内皮機能と心機能との相関は,駆血後血流増加と動脈血酸素飽和度との間に有意な正の相関関係が認められた.【結語】Fontan型手術後患者では内皮依存性の血管拡張能が低下していた.Fontan型手術後患者の血管内皮機能低下に動脈血酸素濃度の低下が関与する可能性が示唆された.

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