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心室中隔欠損における肺血管床Windkessel size―心房中隔欠損との対比による肺循環動態の考察―
杏林大学医学部小児科
磯貝徹也,赤木美智男,阿波彰一,加藤 薫

【目的】Windkessel modelは,血管床の流体力学的モデルとしては最も単純なものであるが,先天性心疾患の肺循環病態生理の解析に有用である.今回われわれは,同じ肺血流増加性先天性心疾患であるVSDとASDにおいて,パラメータの一つであるWindkessel size(WS)を計測し,両者の対比によりその特徴を検討して新しい知見を得たので報告する.【対象と方法】対象はVSD 45例(小欠損S群19例,高肺血流量F群22例,高肺血管抵抗R群 4 例),ASD 47例,対照群(川崎病)17例である.肺動脈圧曲線と肺血流量より時定数τ,肺血管抵抗R,コンプライアンスCを求めた.WSはCと肺動脈圧(収縮期および拡張期)の積として求めた.一方,心血管造影像から主肺動脈径およびPA indexを求めた.【結果】ASDおよびR群以外のVSDでは,WSは肺血流量と正の相関を認め,その分布に有意差はなかった.WSはまた肺動脈圧とも正の相関を認め,その回帰直線の傾きはASDがVSDより有意に大きかった.主肺動脈圧およびPA indexはどちらもWSsと正の相関を示したが,その分布はVSDが明らかに上方にあった.【考察】大欠損のVSDにおいては,肺血流量の増加,肺動脈圧の上昇の両方の負荷が加わるために,ASD(low R,high C)とは逆に,high R,low Cになることで肺血管床の血流処理能力を許容範囲に保つように対応しており,WSもASDと同程度の増大に抑えられている.WSの増大は,近位肺動脈径の拡大で示される横方向への拡大と,より末梢の血管床をもWindkesselに含めるような縦方向への拡大によってなされるが,VSDではASDに比べて横方向への拡大の要素が強いことが示された.これらの変化は主として末梢肺動脈の血管平滑筋の緊張の変化によってもたらされると考えられた.

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