P-II-F-6
修正大血管転換症において心室形態が三尖弁閉鎖不全に及ぼす影響について
東京女子医科大学循環器小児科
富松宏文,中西敏雄,中澤 誠

【背景・目的】修正大血管転換症(cTGA)における三尖弁閉鎖不全(Tr)は予後を左右する重要な因子である.そこで心室中隔の偏移に伴う右室形態の変化がTrに及ぼす影響を明らかにすることを研究目的とした.【対象】ダブルスイッチ手術を目的として肺動脈絞扼術(PAB)を施行した有意な短絡のないcTGA 6 人.男:4 人,女:2 人.PAB時の年齢は中央値48(26~127)カ月.PAB後の期間は中央値43(22~180)日.【方法】PAB前後での心カテや心エコーの所見を比較検討した.心カテでは左右心室圧比などを,心エコーでは右室短軸断面での心室中隔長(a),右室短軸径(b),四腔断面図での三尖弁中隔尖付着部─乳頭筋間距離(c)などを計測した.また,カラードプラ法でTrの程度を半定量的に評価した.【結果】PAB により左室/右室圧比は0.52(0.31~0.74)から91(0.8~1.15)へ上昇した(p < 0.05).Trはsevereからmoderateへ(4 人),severeからtrivialへ,mildからtrivialへ,moderateからmildへ(各 1 人)軽減した.収縮期の右室形態の指標としてb/aは1.12(0.84~1.54)から0.78(0.73~1.11)へ(p < 0.01),c/aは1.4(1~1.6)から1.2(0.9~1.2)へ(p < 0.01)有意に低下した.これは収縮期に右室短軸断面が円形から半円形に近づき,三尖弁と乳頭筋の距離が短縮したことを示している.【考按・結語】cTGAではPABを行うことによりTrが軽減した.その機序として心室中隔が右室側へ偏移することで,右室短軸径が減少し,三尖弁と乳頭筋の距離が短縮することにより,支持組織に余裕が生じ,三尖弁の閉鎖時にその接合面積を増大させることが推測され,これが逆流軽減に役立っていると考えられた.

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