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川崎病の経過観察中に診断された神経調節性失神の 1 例
弘前大学医学部小児科1),弘前大学医学部保健学科2)
江渡修司1),上田知実1),佐藤 啓1),佐藤 工1),高橋 徹1),米坂 勧2)

【緒言】神経調節性失神(neurally mediated syncope:NMS)は自律神経反射の過剰反応ならびに種々の神経体液性因子の関与がその発症機序と理解され,多くは自然治癒する予後良好な症候群と考えられている.しかし,一部は突然死の危険性も孕んでおり,失神の再発予防にあたっては病型確認の上,適切で積極的な治療が求められる.今回,Head-up tilt test(HUT)により,NMSと診断した 1 例を経験した.【症例】16歳男性.1 歳 5 カ月時に川崎病発症し,他院にて川崎病冠動脈病変合併例として 3 歳まで定期心検診を継続され,選択的冠動脈造影(S-CAG)にて退縮を確認された.14歳時,授業中に数分間の失神を認め,精査目的に当科を紹介された.理学所見に特記すべきことなし.胸部X線:正常.安静時心電図:正常洞調律.起立負荷試験で 4 分50秒で嘔気訴え中止.頸動脈洞反射(-).血液検査では鉄欠乏性貧血以外,異常所見なし.頭部MRI,EEGは正常範囲.S-CAGにて両側冠動脈瘤を認めた(遠隔期冠動脈瘤再発例)が狭窄性病変なく,電気生理学検査では洞機能正常であった.運動負荷心電図,心筋シンチグラム(Tl + BMIPP:ジピリダモール負荷)でも虚血性心疾患は否定的であった.以上から失神の原因として,NMSを疑いtilt 60度,心電図モニタ(II誘導)と非観血的動脈圧を同時記録しHUTを施行した.HUT開始後37分で胸苦を訴え,高度房室ブロックの出現による最長 6 秒間の心室静止を来し失禁を伴う失神が誘発され,NMS(心抑制型)と診断した.病型確認後,失神再発予防としてジソピラミドの内服を開始した.薬剤投与後 3 日間連続して行った起立負荷試験は 2 日目に13分45秒で嘔気訴え終了したが 1 日目と 3 日目は15分間を完遂した.【結語】川崎病経過観察中に失神を呈しHUTにて心抑制型NMSと診断した 1 例を経験した.今後HUT再検による薬効評価やtilt trainingについて検討予定である.

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