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チアノーゼとうっ血性心不全を呈する先天性心疾患患者に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬
山形大学医学部発達生体防御学講座小児医科学分野
鈴木 浩,田辺さおり,仁木敬夫,早坂 清

【背景】アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)はうっ血性心不全患者に対して確立された治療であるが,チアノーゼを呈する心不全患者に対するACEIの報告は少ない.【目的】チアノーゼを呈するうっ血性心不全患者に対するACEIの有用性について検討する.【対象と方法】山形大学小児科でうっ血性心不全に対しACEIを投与した,チアノーゼを有する先天性心疾患患者 5 例を対象とした.術後早期から投与した例は除外した.年齢は 5~34歳で,2 例は成人であった.男が 2 例,女が 3 例で,体重は15~46kgであった.診断は両大血管右室起始症,心内膜床欠損症などで,心不全の原因として房室弁逆流が多かった.NYHA心機能分類はII度が 2 例,III度が 2 例,IV度が 1 例であった.全例エナラプリルを用い,初回量は0.04~0.06mg/kg/日であった.最終投与量は0.04~0.17mg/kg/日で,4 例では0.1mg/kg/日以下であった.併用薬はジギタリスや利尿薬などであった.ACEI開始前後のNYHA心機能分類,胸部X線での心胸郭比(CTR),収縮期血圧,心拍数,パルスオキシメータによる動脈血酸素飽和度(SpO2)について検討した.【結果】1 例は咳のためACEIを 1 カ月で中止した.他の 4 例の投与期間は 6 カ月~2 年であった.NYHA心機能分類に変化はなかった.胸部X線でのCTRは投与前の59~65%から投与後51~60%に減少したが,その後53~70%に増加し,2 例でACEIを増量し,2 例で他の薬剤を追加した.低血圧が出現した例はなく,心拍数に変化はなかった.SpO2は投与前の71~83%から投与後は74~84%と変化はなかった.腎機能障害を来した例はなかった.【結語】チアノーゼを呈する先天性心疾患患者のうっ血性心不全に対し,アンジオテンシン変換酵素阻害薬は有用である.

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