P-II-F-11
フォンタン型手術術後の血行動態―プロタノール負荷による検討―第 2 報―
北里大学医学部小児科
堀口泰典,広田浜夫,中畑弥生,平石 聰,藤野宣之,武田信裕,小川夏子

【背景】フォンタン型手術(以下F)後予後不良例の安静時,運動時の血行動態は不明な点が多い.第 1 報でF後症例のイソプロテレノール負荷(負荷)に対する心血行動態の変化を検討し報告した.【目的】F後右心系圧が負荷で上昇した 1 例を経験した.第 1 報で報告した症例の負荷に対する心血行動態の変化と比較するとともに,電子ビームCT(EBCT)で肺循環時間も測定し検討した.【方法】症例はCo/Ao,DORV,bilateral SVCの合併例で生後 7 日にCo/Ao解除,生後 6 カ月時両側両方向性Glenn,1 歳11カ月時TCPCを行った.術後 1 年 3 カ月で心臓カテーテル検査を実施.安静時の主要圧データ,ガスデータ,肺血管,体血管抵抗測定後,ISP 0.02γ/kg/minを10分間負荷し,同様に測定した.F後の 8 症例[単心室 4 例(左心室型 2 例,右心室型 2 例),三尖弁閉鎖 3 例(1a,1b,1c各 1 例),両大血管右室起始兼肺動脈閉鎖 1 例]を対照とした.2 カ月後,EBCTにより安静時と負荷時の肺循環時間を測定した.【結果】負荷後の心係数増加率は115.8%と不良で第 1 報のA群と同等であった(A群104±13.4%,B群173±29.2%,p < 0.05)この 2 群間で安静時,負荷時の各データに有意差なかったが,本例は右心系圧が負荷時有意に上昇した(SVC12→13.2,IVC12→13.2,左PA11.6→15.6,右PA9.2→11.6単位mmHg).また,EBCTでの肺循環時間は左2.4→3.0秒,右2.9→3.7秒と有意に延長した.画像上は左肺静脈が乏しかった.【考案および結論】負荷により心拍出量が低下する例で肺循環時間が延長することをすでに報告したが本例は心拍出量は少ないながらも増加するが右心系圧上昇と肺循環時間の延長が同時に認められ中間的な結果であった.また,安静時肺血管抵抗1.38単位だがV-Vシャントの発生や運動時息切れもあり予後不良となる可能性が高い.負荷時の右心系圧上昇は予後不良と関連し,それを反映する肺循環時間の測定は予後予測に有用であると思われる.

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