P-II-F-12
胎児新生児循環移行期における冠循環動態
秋田大学医学部小児科
青木三枝子,原田健二,田村真通,豊野学朋,石井治佳,島田俊亮

【背景】胎児・新生児仮死では生直後から心筋虚血と心機能障害があり,新生児においても,冠血流評価は臨床的意味がある.胎児循環移行期にあたる新生児生後早期は循環動態が劇的に変化し,冠循環もそれに伴い変化すると予想されるが,生後早期の冠血流に関する知見は乏しい.【目的】新生児早期の冠動脈血流変化を検討すること.【対象と方法】当院で満期自然分娩にて出生した新生児10例に対し,動脈管(DA)が大きく開存している生後 6 時間,DAが閉鎖した24時間,退院時の 5 日に心エコー検査(Aloka SSD-6500,7.5MHz探触子)を行った.血圧測定は自動血圧計(ダイナマップ)を用いて右上肢で行った.カラーおよびパルスドプラ法を用いて大動脈弁短軸像より左冠動脈前下行枝(LAD)を描出し,平均血流速度average peak flow velocity(APV)を心電図記録とともに計測した.さらに組織ドプラ法(TDI)を用いて,僧帽弁輪壁運動速度波形からTei indexを計測した.【結果】生後の時間経過に伴うdouble product の変化はみられなかった.LADにおけるAPVは生後 6 時間で17.3±4.4cm/s,24時間では15.8±7.3cm/s,5 日で16.6±6.1cm/sと変化はみられず,TDI Tei indexも生後 6 時間で0.46,24時間では0.4,5 日で0.43と胎児循環移行に伴う変化は認められなかった.【結語】劇的な循環変化を伴う胎児・新生児循環移行期では,動脈管閉鎖過程に伴う左室容量負荷変化はあるものの,心機能およびdouble productは一定でLAD血流の変化を認めない.この結果の臨床的意義は,胎児・新生児仮死における心筋酸素需要・供給関係および心筋虚血・心機能障害の理解と治療のための基礎データとなる点である.

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