P-II-F-15
左室dp/dt maxの大動脈dp/dt maxよりの推定―第 2 報各先天性心疾患における適応―
埼玉医科大学小児心臓科1),埼玉医科大学心臓血管外科2)
熊倉理恵1),増谷 聡1),先崎秀明1),石戸博隆1),松永 保1),竹田津未生1),小林俊樹1),桝岡 歩2),朝野晴彦2)

【背景】左室dp/dt maxは,大きくloadの異ならない状況での収縮性変化の感度が高く,依然有用な指標である.われわれは多彩な疾患群の小児例を検討し,左室および大動脈dp/dt maxの比の規定因子を明らかにし,左室dp/dt maxを非侵襲的に算出する方法を報告した.Ao dp/dt max/LV dp/dt max = 0.732+3.1*10-5*Z0-0.001*HR-0.004*MBP(R = 0.90)(Zo:characteristic impedance).血管床が硬くなるほど,また左室圧曲線において大動脈弁開放ポイントが早くなるほど,この比は大きい値をとることを示唆する.【目的】この方法が小児心疾患において広く成立するかを調べるために,同一疾病群を抽出し,群内での予測の精度を検討すること.【対象・方法】当科で心臓カテーテル検査を施行したA群:心房中隔欠損16例,B群:小短絡心室中隔欠損14例(Qp/Qs < 1.5),C群:大短絡心室中隔欠損15例(Qp/Qs > 2).高精度圧ワイヤにより左室よりの引き抜き圧で求めた比(左辺)とその推定値(右辺)の相関を検討した.【結果】心室に短絡のないA群および心室に小短絡のあるB群でR = 0.80,0.94と良好な相関を認めた.一方左室拍出の多くを肺循環に供するC群においてもR = 0.83と良好に相関した.【考察】大短絡を有するVSD群でも,Ao dp/dt max/LV dp/dt max比が左右短絡に応じて小さい値をとらず,同様に回帰式があてはまることは,高肺血流においても体血圧を維持すべく体血管床を変化させて対応している循環調節の結果と考えられる.左右短絡を有する疾患群においても広く上記の関係が成立し,非侵襲的に算出可能なAo dp/dt maxおよび血管床の性質からLV dp/dt maxが精度よく推定でき,循環管理に貢献しうると考えられた.

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