P-II-F-18
段階的Fontan手術における肺血流動態―肺血流シンチによる検討―
神奈川県立こども医療センター循環器科
林 憲一,康井制洋,金 基成,上田秀明,宮本朋幸

【背景】われわれは第39回日本小児循環器学会総会において,TCPC術後の正常肺血流分布様式を明らかにし,肺血流シンチが狭窄等の肺血流分布異常の検出に有用であることを示した.【目的】両方向性グレン(BCPS)およびFontan(TCPC)術後における肺血流シンチ所見より,段階的Fontan手術(sTCPC)における肺血流動態を検討する.【対象】TCPCまで到達し,BCPSあるいはTCPC術後に肺血流シンチを施行しえた41例79件分の肺血流シンチデータ[一期的な従来型TCPC(cTCPC):28,sTCPC:15,BCPS:36].【方法】上下肢から,両側SVCの場合は左右上肢および下肢から99mTc-MAAを別個に投与し,左右カウント比(%)を算出した.便宜上,conduit-PA吻合と同側に存在するSVCおよび肺をipsi-SVCおよびipsi-lungとし,反対側はcontra-SVCおよびcontra-lungと定義した.【結果】(1)正常TCPC(n = 32):単独SVC例では,SVCからはipsi-lungへ多く流入し,両側SVC例ではipsi-SVCからは主にipsi-lungへ,contra-SVCからは大部分がcontra-lungへ流入した.SVCの種類にかかわらず,IVCからの血流に有意な左右差はなかった.cTCPCとsTCPCでは肺血流分布様式に有意差はなかった[単独SVC例のSVC血流:cTCPC(ipsi-lung:contra-lung = 84.1:15.9),sTCPC(ipsi-lung:contra-lung = 75.9:24.1)].(2)正常BCPS(n = 27):SVCからの肺血流パターンはTCPCとほぼ同様の血流パターンを示した[単独SVC例のSVC血流:ipsi-lung:contra-lung = 74.3:25.7].しかし,この傾向に外れる例も少数例存在した.(3)同一症例でBCPSおよびTCPC所見を比較しえた正常sTCPC(n = 15):SVC血流の分布様式はTCPC前後で有意な変化のない場合が多かった.(4)異常例:正常例との比較により異常の検出が可能であった.【結論】SVC血流の分布様式は,BCPS後からすでにTCPC後Fontan循環を反映している.肺血流シンチは,sTCPCにおける経時的肺血流評価の簡便な手段として有用である.

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