P-II-G-4
心エコー法,QT dispersion法および加算平均心電図法の方法の違いによるanthracycline(ATC)系薬剤の慢性心毒性の評価の差異の検討
日本医科大学小児科
内木場庸子,深澤隆治,池上 英,勝部康弘,上砂光裕,大久保隆志,渡辺美紀,松本多絵,小川俊一

【目的】心エコー,QT dispersion(以下QTd)および加算平均心電図(以下SAE)を用い,方法の違いによるATC系薬剤の慢性心毒性の評価を検討した.【対象および方法】対象は,年齢 2 歳から28歳の悪性腫瘍既往児28例.ATC治療終了後より 1 カ月から13年経過している.ATC蓄積量は80~600mg/m2.ATC蓄積量により以下の 3 群に分類した.A群:< 200mg/m2(8 例),B群:200~400 > mg/m2(16例),C群:400≦mg/m2(4 例).対象例はすべて心室頻拍や心室粗動および心不全の既往はない.安静時の12誘導心電図を記録し心拍補正のQTd(QTcd)を測定.同時に安静時の心エコー(EF,E/A)および,SAE(QRSd,RMS 40,LAS 40)を施行した.QTcd > 50,EF < 50%,E/A < 1.5,SAEは 3 項目中いずれか 1 項目陽性を,それぞれ慢性心毒性陽性とした.【結果】各群におけるそれぞれの方法での陽性率は,A群はQTcd 12.5%,心エコー法12.5%,SAE法87.5%,B群はQTcd 18.8%,心エコー法 0%,SAE法68.8%,C群はQTcd 50%,心エコー法50%,SAE法75%であった.なお,A群でのSAE陽性者のATC蓄積量は80mg/m2以上であった.【まとめ】各方法における異常が意味するところに差異はあるが,SAEによる方法がATC累積量が少ない時点より慢性心毒性を評価することが可能であると思われる.

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