C-III-14
デュシェンヌ型筋ジストロフィ(DMD)における血清トロポニンT(TnT)の測定意義
国立療養所徳島病院小児科1),徳島大学医学部小児科2)
清川誠司1),多田羅勝義1),森 一博2),黒田泰弘2)

【背景】DMDでは脳性Na利尿ペプチド(BNP)は心機能が高度に障害されるまで上昇を認めず,本症の心不全早期診断の有力な手段とはいえない.成人では拡張型心筋症等でTnTの測定を併用しているが,DMDにおけるTnTの意義は不明である.【方法・対象】DMD(n = 19,平均年齢 = 20.3±3.8歳)を対象にTnTを測定しBNP,CK-MB,左室内径短縮率(SF)と比較した(のべ37回).【結果】(1)SF < 15%でTnTの上昇例が多く,最高値は0.72ng/mlであった.(2)CK-MBとTnTの相関は認められなかった.(3)BNP > 20pg/mlの症例のうち,TnT正常例ではSF = 9.6%(中央値),TnT異常例ではSF = 4.9%であった.すなわち,BNP高値の症例では,TnTの上昇に伴いさらにSFが低下する傾向が認められた.(4)死亡した 1 例は表のD群(BNP,TnTともに上昇した群)に含まれ,死亡直前にはBNP上昇に比してTnTの上昇は認められなかった.(5)BNPが正常でも31%の症例にTnTの上昇を認めた.【結論】BNP高値群ではTnTも異常値を呈する例で重症例が多かった.死亡直前ではBNPの上昇に比しTnTの上昇は少なく,心筋細胞内のTnTの枯渇が示唆された.BNPとTnTの両者を測定することにより,DMDの心不全の詳細なリスク層別化が可能となると思われる.


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