C-III-17
拡張型心筋症発症早期の吸着式血液浄化法とガンマグロブリン大量療法
札幌医科大学小児科
高室基樹,布施茂登,堀田智仙,富田 英

拡張型心筋症(DCM)発症にはガンマグロブリン大量療法やステロイド反応例がある.今回,免疫吸着療法後にガンマグロブリン大量療法を行い著効したDCMの 1 例を経験した.【症例】5 歳女児.嘔吐で発症し近医で心拡大を指摘され,当科に搬送された.NYHA 4 度.入院時体重17kg.血圧78/54,心拍数170,gallop rhythm,肝臓を 5cm触知した.心胸郭比60%,LVDd 55.5mm(160%),%FS 19%,MR severe,LV Tei index 0.68であった.利尿薬,ACEIを開始し,第 4 病日の心プールではLVEF 12.8%,第 9 病日(体重15.7kg)の心臓カテーテルではCVP 9mmHg,平均PAP 24mmHg,LVEDP 15mmHgであった.同時に施行した心内膜心筋生検で線維化を認めDCMと診断した.心内膜心筋生検,ガリウムシンチで炎症所見はなかった.文書で同意をいただき,第25病日(体重16.7kg)に吸着式血液浄化法による免疫吸着療法,26病日にガンマグロブリン大量療法(2g/kg/日)を行った.免疫吸着は旭メディカル社製イムソーバを用い,右上腕動脈脱血(19G留置針),右下肢内果静脈送血(18G留置針),流量50~60ml/分,合計750mlを環流させた.鎮静は静脈麻酔薬を用いた.循環動態は変わらず終了した.第29病日の心プールではLVEF 17%とやや改善した.第29病日(体重16.3kg)にカルベジロール 1mgを導入し 7mgまで漸増した.40病日のエコーで%FS 22%まで改善した.7 カ月後の心プールLVEF 50%,1 年後のエコーで%FS 34%と著明に改善し,NYHA 1 度で自覚症状はない.【考察と結語】本例の改善はβ遮断薬,ACEIの寄与も高いと考えられるが,免疫吸着とガンマグロブリンにより心筋障害をもたらす免疫応答を抑制できた可能性もある.DCMには本法が有用な症例が存在し,血漿交換に比べ簡便で血行動態への影響も少なく,試みてよい治療法と考えられる.

閉じる