C-III-22
小児における房室弁置換術の適応と経過
山梨大学医学部小児科1),山梨大学医学部第二外科2)
小泉敬一1),杉山 央1),星合美奈子1),丹 哲士1),戸田孝子1),鈴木章司2),石川成津矢2),中澤眞平1)

先天性僧帽弁異常,単心室に伴う共通房室弁に施行した房室弁置換術の適応と経過について検討した.【対象】1999年以降に房室弁置換術を施行した 9 例(先天性僧帽弁異常 4 例,DCM 2 例,単心室 3 例).年齢は 3 カ月~11歳 1 カ月(中央値 1 歳),体重は3.2~16.6kg(中央値6.2kg).形態による弁置換術の適応は,狭窄合併 3 例,弁形成困難な逆流 3 例,弁形成術後の逆流増悪 3 例だった.8 例に機械弁ATS(16~29mm)を置換し,抗凝固療法が困難と考えた 1 例に生体弁(19mm)を置換した.機械弁置換では,ジピリダモールとワーファリンを使用しPT(INR)2.0~3.0を目標にした.心エコー,凝固検査を 1 カ月ごと,弁透視を 6 カ月ごとに施行した.【結果】人工弁輪径/僧帽弁輪径予測値は1.04~1.57(中央値1.25)だった.ワーファリン維持量0.11~0.22mg/kg/日で,PT(INR)は1.7~4.1で目標値到達率は35/39回(90%)であった.弁透視で,開放角65~75度,閉鎖角20~30度で経過中変化は認めなかった.心エコーで弁通過最大血流速度は術直後0.7~1.5m/sec(中央値1.3m/sec)から,12カ月後0.7~1.8m/sec(中央値1.2m/sec,n = 7),24カ月後1.1~2.3m/sec(中央値1.40m/sec,n = 5)に上昇した.2.3m/secに上昇した 1 例は,pannusに伴う弁狭小化のため 2 年 3 カ月後に再置換術を行った.早期合併症は,血栓弁 2 例で血栓溶解療法を施行し,1 例は改善したがDCMの 1 例は脳内出血で死亡した.遠隔期10カ月~4 年 9 カ月(中央値 2 年 1 カ月)に合併症,死亡例はない.【結語】遠隔期合併症,死亡例はなかったが,術後早期の合併症に対する注意が必要である.弁通過最大血流速度は,弁狭小化の評価に有用である.弁形成が困難な例や無効例には,乳幼児でも弁置換術は有効である.

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