D-III-3
姑息手術のみで成人期に達したチアノーゼ性複雑心奇形の手術適応
兵庫県立尼崎病院心臓血管外科1),兵庫県立尼崎病院心臓センター小児部2)
森島 学1),野本慎一1),朴 昌禧1),大谷成裕1),齋藤文美恵1),若原良平2),坂崎尚徳2),槇野征一郎2)

チアノーゼ性複雑心奇形の患児で小児期に心内修復術あるいはFontan手術を受けずに,姑息手術のみで成人期に達している症例について検討を行った.【症例】チアノーゼ性心疾患で姑息術が最終手術介入であった患者のうち20歳以上まで当院にて経過観察が可能であった症例は17例で,平均26歳(20~35歳),男性 9 例,女性 8 例,そのうち死亡例は 3 例だった.単心室は11例(無脾症 3 例,多脾症 1 例),PA with VSDは 2 例で,TA,Ebstein,TS + PA,CTGA + PSは各 1 例だった.姑息手術は合計31回(1.8回)行われており,内訳はBT shunt 21例,PAB 3 例,PAB debanding 2 例,Glenn 2 例,BT + PAB 1 例,RV-PA conduit 1 例,Blalock-Hanlon 1 例だった.初回手術介入は 0~15歳(4 歳),最終手術介入は 0 歳~18歳(7 歳)で,そこからのfollow up期間は12~30年(18年)である.そのうち 1 例は 4 カ月時のBT shuntのみで23年間経過している.生存14例の酸素飽和度は81.7%,ヘマトクリットは53%であり,2 例がNYHA I 度,12例がNYHA II度で,9 例は現在就職または就学中であった.完全房室ブロックを 2 例,上室性頻脈を 2 例に認め,1 例はcatheter ablationを行った.ネフローゼを 1 例に認めた.生存14例中,根治術適応外は 6 例であり,8 例はFontan型手術適応の可能性を認めるが,手術の危険性と現在のQOL,当人,家族の希望などにより経過観察されている.SV + CTGAの症例はSASの進行による突然死の可能性が高いと判断し(BNP:482 pg/ml),SAS解除のためDKS吻合を施行した.死亡例中 2 例は単心室,無脾症の症例で腎不全,心不全により死亡し,他の 1 例はCTGA + PSで心内修復術の再検討の入院中に突然死した.【結語】チアノーゼ性複雑心奇形で姑息手術のみで成人に達した症例の中には長期にわたりQOLが比較的良好に保たれており,姑息手術が最終手術として有効な症例が多いが,一方でSASの進行による突然死の可能性を防止するための手術介入が必要とされる場合が考えられる.

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