KV-E-1
小児におけるpulse wave velocity,ankle brachial index測定の意義
札幌医科大学小児科1),NTT東日本札幌病院小児科2),国家公務員共済組合連合会斗南病院小児科3)
富田 英1),高室基樹1),堀田智仙1),大柳玲嬉2),布施茂登2),日下卓右3)

【背景】pulse wave velocity(PWV),ankle brachial index(ABI)は,成人において動脈硬化や閉塞性動脈硬化症の指標として有用性が報告されているが,小児における検討は少ない.【目的】小児におけるPWV,ABI測定の意義を検討すること.【対象と方法】body mass index(BMI)25未満,4~25歳(中央値12歳)の軽症心疾患児111例を対照群,BMI 25以上,8~18歳(中央値12歳)で心疾患を有さない12例を肥満群,良好にコントロールされた糖尿病(I 型 7 例,II型 2 例),10~19歳(中央値14歳)9 例を糖尿病群,大動脈縮窄または離断術後,13~19歳(中央値18歳)7 例を術後群とした.日本コーリン社製Form PWV/ABIにてPWV,ABIを測定した.PWVは実測した上下肢のマンシェット間距離で補正した.PWVは対照群における年齢との回帰式から正常期待値を算出し,percent of normal predicted PWV(%N PWV)で表示した.対照群における%N PWV,ABIのそれぞれ平均値 +2SD以上,平均値 -2SD未満を異常と判定した.【結果】(1)対照群でPWVは年齢と有意の正相関であった(PWV cm/sec = 543.3 + 10.0 × 年齢,p < 0.01,r = 0.44).(2)%N PWVは術後群で対照群より有意に大であった(p < 0.01).%N PWVが +2SD以上の異常値を示す頻度は肥満群で有意に多かった(p < 0.05).(3)ABIは術後群,糖尿病群で対照群より有意に小であったが(p < 0.01),ABIが -2SD未満の異常値を示す頻度は,3 群とも対照群と有意差なし.【考察と結語】PWV,ABIは小児肥満,大動脈縮窄/離断術後における大動脈硬化の指標となりうる可能性が示唆された.良好にコントロールされた糖尿病小児では硬化性変化のリスクは低いと考えられた.

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