KV-E-4
小児における脈波伝達速度の測定―各種検査法による結果の比較―
新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野
佐藤誠一,羽二生尚訓,沼野藤人,星名 哲,朴 直樹,長谷川聡,遠藤彦聖,鈴木 博,内山 聖

【背景】動脈硬化の進展を非侵襲的に評価する方法として,画像で評価する方法と機能から評価する方法がある.後者の代表的な測定法である脈波伝達速度(pulse wave velocity:PWV)は,小児領域でも高脂血症・肥満・糖尿病など生活習慣病の分野で検討され始めている.【目的】PWV測定の原理は,2 点の脈波を同時記録(2 点間の距離:L,2 点の脈波の時間差:ΔT)してPWV = L/ΔTで得られる.(1)心カテ中に下行大動脈の 2 点の圧波形(cathPWV),(2)頸動脈と大腿動脈の脈波(cfPWV),大腿動脈と後頸骨動脈の脈波(ftPWV),(3)上腕動脈と足首動脈の脈波(baPWV:日本コーリン社製),3 種類を測定し比較した.【対象および方法】2003年 4 月から2004年 1 月の間に,当科で心臓カテーテル検査を受けた患児のうちで,胸痛の精査や川崎病既往で結果的に冠動脈病変がなかった症例など22例(男18例,女 4 例,10カ月~22歳,中央値10歳 1 カ月)を対象とした.心カテ中に右Judkinsカテーテルを用い下行大動脈の 2 点で圧波形を記録し,引き抜いたカテ長を 2 点間の距離としてcathPWVを測定した.さらにFrank法を用いてcfPWVを測定した.日本コーリン社製のbaPWVはカフが成人用のため,身長150cm以上の 8 例に施行した.【結果】cathPWVは431±71cm/秒,cfPWVは516±66で,いずれも10歳前後に最小値を有する下に凸の二次曲線様に分布した.今回の症例数では両者の間に相関は認められなかった.ftPWVは894±160,baPWVは903±95と大きな値を示した.【考察】PWVは血管壁の弾性係数(ヤング率E),壁厚(h),内径(半径r),血液の密度(ρ)の関数として,Moens-Kortewegの式:PWV2 = E × h/2r × ρでモデル化できる.10歳未満では壁厚に比して血管内径が小さいためにPWVが大きく測定されることが推察された.上肢や下肢の血管径が小さいことが,各検査法で異なる結果をもたらすと考えた.

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