招請講演II 
小児心臓移植の手術適応と長期予後
Professor and Vice Director, Heart Center North Rhine-Westphalia, Bad Oeynhausen Ruhr- University of Bochum, Bochum, Germany
南  和友
 当施設にて,1989年11月から2004年 2 月までに1,340名の心臓移植を行ったが,そのうち104名(7.8%)は16歳未満の小児であった.ここに小児の心臓移植後の長期予後をレシピエントの愿疾患,年齢に注目して分析してみた.
愿疾患は原発性心筋肥大症(DCM)74名,先天性心疾患(CHD)30名で,男女の比は59/45,年齢は0.4~15.9歳(平均6.2歳)で 1 歳未満19名,1 歳以上85名であり,待機時間は0.1~749週(69.0週),補助人工心臓(VAD)は11名の小児に使用された:Novacor 1,Thoratec 6,Medos 2,ECMO 2.VAD装着後の待機時間は 1~258日(73.5日)であった.ドナーの男女別は59対45名で年齢は0.1~31歳(6.43歳),主な死亡原因は脳外傷(53.8%),酸素欠乏症(22.1%),脳出血(11.0%),脳腫瘍(4.8%)であった.ドナー虚血時間は95~340時間(211時間).
早期死亡(hospital mortality)は14.4%,後期死亡率は9.6%で,主な死亡原因は拒絶反応 6,左心不全 5,GVP 4,感染症 3,肺合併症 2 などであった.全体の104症例の長期予後(Kaplan-Meier survival curve)は 1 年(84.5%),5 年(78.6%),10年(71.6%),13年(71.6%)であった.DCM群とCHD群,そして 1 歳未満群と 1 歳以上群を比較すると 1,5,10,13年目ともに有意な差があった.
小児の心臓移植は成人のそれと同様にルーチンに安全に行うことができる.小児心臓移植後の長期成績はDCM群はCHD群に比べ,そして 1 歳以上は 1 歳未満に比べ統計的に予後が良い.しかし,CHD群と 1 歳未満の群の予後の経過は 1 年以降ではDCM群,1 歳以上の群と比べて劣らない.



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